十三話。 ページ15
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猫って…暇だな。
今まで学校に行っていた時間が無くなって、ずっと日向ぼっこ。
正直暇だしつまんねーわ。
ていうか人間の私って死んだ扱いになってんのかな…。
だとしたらちょっと悲しいわね。
『Aちゃん、今暇だったらちょっと来てー』
キッチンの方からひなさんに呼ばれて、そちらへ向かう。
なんとひなさんはクッキーが入った小さな袋を持っていた!
『これ、向こうで一緒に食べよー』
え、人間のだよね!?
食べちゃっていいんですか?いや、だめですよね。
『それ食べたらさとみくんに怒られると思いますよ』
私が猫語でそう言う。
ひなさんは口から袋をはなした。
『でもこれすっごく美味しいんだよ。サクサクだし、あのご飯は飽きてきたし…』
ぐっ…。
それは美味しそう…。私も猫のご飯ばっかりで嫌だったのよね。
『……でもだめですよ!私たちが体壊して一番悲しむのはさとみくんですから!』
私はそう言い切った。
いや食べたいのは山々だけど、さとみくんに心配かけたくないしね。
『何か…Aちゃんってさとみんの事、好きそうな感じがする』
ひなさんが袋を机の上に置いてからそう呟いた。
す、好き!?いや、まあそうと言えばそうだけど……。
『やっぱ好きなんだねー、飼い主に恋愛感情を抱くなんて、純粋だなー』
ひなさんにからかうようにそう言われた。
悔しいけど否定はしないわ。事実だし。
でも飼い主って言うよりは人間の頃の出来事が好きなの。
『…人間だったころに、優しくしてもらったんです…』
私は戸惑いながらも口を開く。
入学式の時に、先生から頼まれた段ボールを一緒に運んでくれたこと。
数学の時に、忘れた教科書を貸してくれたこと。
国語の時に、メモを交換して答えを教え合ったこと。
体育の時に、男女合同の二人ペアを一緒に組んでくれたこと。
素直じゃない私に声をかけてくれたこと。
『ってまあ、全部私だけにしている事じゃなくて、
さとみくんはみんなに優しいんですけど』
でもたぶん、私はもう二度と人間としてさとみくんの優しさを受け取れない。
そう思うとちょっと悲しいよね…。
『…そうなんだね…。よしっ!じゃあ、
僕とみみとモカでAちゃんを人間に戻してあげる!』
えっ!?ひなさんイケメン…。
でもそんなのできなくない?たぶん人間の私は死んでるし…。
『約束だね!』
ひなさんはそう言って立ち去った。
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影の黒鷺 - 絵宙(えそら)さん» ユーザー認証…私が見るときには出てこないんですけど…どうなんでしょう。こちら側としては設定していないので、運営さんのバグですかね…。運営さん…(´;ω;`) (2020年5月26日 16時) (レス) id: 4d7a8fb4ac (このIDを非表示/違反報告)
絵宙(えそら) - ユーザー認証が必ず出てくるんですが私だけですか…?(´ ; ω ; `) (2020年5月26日 10時) (レス) id: 63faa5bcfc (このIDを非表示/違反報告)
ゆら(プロフ) - 影の黒鷺さん» 私の小説も読んでくださってたんですね!とても嬉しいです泣 これからもお互いがんばりましょーね! (2020年4月11日 14時) (レス) id: 7e1be6dd9a (このIDを非表示/違反報告)
影の黒鷺 - ゆらさん» そんな風に言っていただいて本当に感謝しかないです…!私もゆらさんの小説が大好きでいつも見させていただいております。応援ありがとうございます、励みになります(*´ω`*) (2020年4月10日 22時) (レス) id: 4d7a8fb4ac (このIDを非表示/違反報告)
ゆら(プロフ) - 黒鷲さんの作る小説って、キャラ設定がしっかりしているうえに、それがブレちゃわないところがすごいと思います。。。夢主ちゃんのツンデレな性格がとても可愛いんだけど、さとみくんと気持ちがすれ違っちゃうともどかしくなっちゃいますねwこれからも応援してます!! (2020年4月10日 21時) (レス) id: 7e1be6dd9a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:影の黒鷺 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kagenokurosagi/
作成日時:2020年4月3日 15時