厄災四十と二 ページ47
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「んッ………はぁっ」
『ッ……』
ぐちっ…ピチャッ……時折、啜る音をたてて、静まり返る闇の中に水音に似た音が響き渡る……。
月光も届かない部屋の隅で、捕らえた獲物に狐の目が妖しさを携えながら鋭く光りを放つ……。
逃がさないように抱えられた腕の中で、虧月は声を出さないように小狐丸の着物を握りしめた…。
「はぁッ…………ありがとうございます……主様…」
『ッ……うん』
どれ程そうしていただろうか……。
名残惜しそうに首筋に残る血を舐めとると、申し訳なさそうにそっと触れる小狐丸に、虧月は小さく頷いて、握りしめていた着物を離した。
『でも、何で今日だったの?』
「…………と、言うのは?」
手慣れたように傷口を治療する小狐丸を背に、虧月が首を傾げる。
それに反応するように治療する手を一度止めた小狐丸が治療を再開させながら問いかけると、それを気にした素振りを見せずに虧月は純粋に口を開いた。
『何時もはもう少し時間が開くのに、何で今回は早かったのかなぁ…て』
「…………」
『……ごまさん?』
何時もならば、一回血を摂取すれば少なくとも2〜3週間は発作が治まるはずが……
その血を摂取したのが一昨日、そして、今日なのである。
普段のペースより大分早く訪れた”発作”に、虧月が拒むことはないのだが……
あまりにも早いタイミングに首を傾げる。
塞ぎきらなかった傷口に再び牙を突き立てられたそこから、じわりとガーゼ上層に血が滲んだ。
「…………分かりません。……ですが、主様が下さりました故、当分は恐らく大丈夫かと」
『んー…それなら良いけど……。ごまさんが何か苦しんでたら嫌だなぁって思って』
「主様……」
何もないなら安心したと無邪気に微笑む虧月に
小狐丸の瞳が、感動したように潤む。
「主様のお陰で私は言葉に表せないほど救われています。勿論、何かあればいの一番に主様のところへ参ります。……ですから、そのときは宜しくお願い致します。」
『うん!僕が出来ることなら頑張るね!』
「はい」
小狐丸の腕の中で、微笑み見上げる虧月を愛お
しそうに見つめて小狐丸も微笑み返した。
『見てみて〜、ごまさん!』
「おや、狐ですか。とても愛らしいですね」
やがて、そのまま小狐丸の膝の上で月光に出来る指の影で遊びだす虧月を眺めて笑みを深め慈愛の目で見つめた…。
……本当の理由を内に隠して……。
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不思議の国の有栖さん(プロフ) - 最高です (2021年1月15日 23時) (レス) id: 1031f2154f (このIDを非表示/違反報告)
紫羅那@龍蓮(プロフ) - 更新頑張ってください!めっちゃ好きです! (2020年3月11日 17時) (レス) id: 52a85e5aa6 (このIDを非表示/違反報告)
朔櫻 実桜(プロフ) - 羅維さん» 応援の御言葉ありがとうございます!!楽しみだと言っていただけて嬉しいです!最近中々更新ができませんが、なるべく早く更新できるように頑張ります! (2019年5月14日 16時) (レス) id: b4a1ce9c3e (このIDを非表示/違反報告)
朔櫻 実桜(プロフ) - 闇夜さん» ありがとうございます!!重症待機とは……!早く手入れという名の更新をせねばですね!(笑) 好きだと言っていただけて嬉しいです!更新頑張ります (2019年5月14日 16時) (レス) id: b4a1ce9c3e (このIDを非表示/違反報告)
羅維(プロフ) - 続き、スゴく楽しみです!応援してます! (2019年5月4日 12時) (レス) id: 11865369a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朔櫻 実桜 | 作成日時:2019年3月25日 17時