【刀剣乱舞】禍ツ神の本丸

厄災四十と一 ページ46

「(罪悪感もあるが……一番は”独占欲”故か……)」


虧月が戻ったことにより強制的に話を終わらせ

た三日月が、虧月を困ったように……それでいて

愛おしそうに見つめる小狐丸を前に思案する。



……まるで……やっと捕らえた獲物を横取りされな

いように警戒しているようにも見えて……。



恐らく己自身も気づいていない欲に、何処か呆

れたようにため息を一つ溢した……。









.









『凄い！！浮かび上がってきた！！！』

「はぁ〜……何か妖術みてーですねぇ……」

「なるほど、あぶり出しとは考えたね」


あれから各々が筆と厚紙を手に厨へと集まる

と、三日月の指示の下、墨汁の代わりに林檎の

果汁を筆に付けて思い思いに筆を滑らせる。


此処まで行えば、虧月と盈月以外の刀剣は察しが付いたのだろう……。


疑問符を浮かべながらも、果汁故に光に照らし

て辛うじて確認出来るそれを言われるがままに

火の上で炙ると、浮かび上がる文字や絵に、虧

月と盈月は瞳を輝かせた。


「”あぶり出し”と言ってな。何でも林檎以外に檸檬の果汁等でも代用出来ると……遊びに詳しい刀に教えてもらっていたんだ」

「ぼくたちもひさしぶりに”あぶりだし”をしましたけど……やはり、なんどやっても”ふしぎ”ですね」

『紙燃やしちゃうんだと思った！』

「はっはっはっ！俺達も最初は同じことを思ったなぁ！」


せっかく書いた絵や文字が透けて見えないと思

えば、それを火の上に翳しているのだ……。

燃やす……又は何かの儀式にも見えていたそれだ

が、文字が浮かび上がる様は何とも不思議なも

のだった。


「何かを”炙り出す”……とは、この炙り出しから由来しているとも言われていてな……。目には見えずとも、こうして何か”刺激”を与えれば……存外見えてくることがあるやもしれんな」

キラキラと瞳を輝かせて、浮かび上がる様を魅

いる虧月に三日月が隣りから静かに語りかける。


……その言葉の真意は定かではないが……。

何か確かな”重さ”をもって告げられた言葉に虧

月はその目を見つめ返すと……。

親の……又は祖父母の言葉を素直に聞き入れる幼

子のようににこりと微笑んで小さく頷いてみせる……。


……会話の真意の分かる者など、恐らく当事者である二人だけだろう……。


その行動に満足したのか……。

三日月は優しく微笑み返すと、さて……と立ち上

がって、再び己の筆を手に炙り出しを再開した……。

厄災四十と二→←厄災四十

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す