【刀剣乱舞】禍ツ神の本丸

厄災四十と三 ページ48

その日は朝から雨だった……。

明け方から降り始めたそれは、段々と強さを増

して、激しい音と共に身を地面へと打ち付けた。


「湿気で髪はうねるし……じめじめするし……最悪」


……雨の日とは何故こうも憂鬱な気分になるのだろうか……。


少なくとも、纏わり付くようなじめじめとした

湿気と降り止まない雨は、加州にとって憂鬱そ

のものであることに変わりはない……。

朝餉の片付けを終えて、自室に戻ったであろう

小さな主の元へ向かいながら、加州は庭に降り

注ぐ雨にため息を溢した。


……こんな日は室内で遊ぶ一択……

果たして小さな主を満足させられる遊びがある

のか……。



そんなことを考えながら歩みを進める加州だっ

たが…………。





「この分なら暫く止まな……」






ふと視界に入れた庭に、ブツブツと呟いていた

小さな独り言と共に足を止めて、唖然と”それ”を見つめた…………。





…………そして…………









「何してるの！！？主ィイ！！！」









擘くような加州の悲鳴が庭へ響き渡った。







『あ、かみー！！かみーも一緒にやる？』



響いた加州の声にのんびりと答えたのは虧月で…………。

悲鳴の原因である”水浸し”のまま、呑気に此方

へと手を降る虧月に、加州は慌てて駆け寄る

と、ぐっしょりと雨に濡れた手を無理矢理屋根

の下へと引いた。


「一緒にやるわけないでしょ！こんなに濡れて……盈月も何で一緒になってやってるわけ？！」


幸いと言うべきか……自室の前の庭で文字通り雨

に打たれていた虧月に、加州が慌てて持ってき

たタオルで虧月の頭を拭くと、何故か虧月と一

緒になって雨に打たれていた盈月へ、八つ当た

りするようにもう一枚のタオルを投げつける。


温かくなってきたとはいえ、未だ冷たい雨に全

身濡れまくる主とその刀に説教の一つでも言わ

なければ気が済まなかった。


「主がやりたいって言うんで」

『雨って水でしょ？それなら、桶と僕の服のどっちのほうがたくさん水を取ることが出来るのかなぁって！！』

「つまり、桶と同じ時間雨水に打たれたら、桶と服どちらのほうが多くの水を得られるかという……」

「解説ありがとう！！でも雨に濡れたら風邪引くでしょ！！？」

『えへへ』

「えへへ、じゃない！」

加州の勢いに、面倒臭そうに目を瞑る盈月と悪

びれもせず(……と言うより悪いと思ってない)笑

う虧月に、加州は疲れたようにため息を溢した。

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