【あんスタ】早暁の空【男主】

早暁に昇る ページ12

＊Rin＊

また一つ、また一つと服の下にガーゼを張り付

ける。

ギプスの取れた腕に包帯を巻いて小さく溢れた

息は厭に室内に響いた気がした……。



＿＿コンコン……。


『……』

そろそろ家を出なければ“あいつ”と顔を合わせ

ることになる…。

溜まり行く蟠りを無理矢理押し込んで荷物を纏

めた鞄を肩に掛けようと持ち上げると、不意に

聞こえた自室のドアのノック音。

ノックの後に続く沈黙に、扉の先にいる人物を

特定すると、妙に重く感じる腕で鞄を肩に掛け

て扉に向かった…。


『……』


扉を前に自然と止まってしまった足に早まる心

臓を沈めるように一度溢れた深呼吸。


……自身の家……それも、自室で何を朝から緊張しているのか……


思わず溢れた自嘲に一度包帯を巻いた腕で拳を

握りしめると、ゆっくりその手をドアノブにか

ける。

『(大丈夫……流石に、朝はないはずだ……)』

開いた先に佇む人物に朝の挨拶をして、自身を

落ち着かせるように心の中で呟いた。

「〈おはよう、綾〉」

にっこりと微笑んで玲がスケッチブックを掲げ

る。

そのままじっと見つめる玲の視線に何となく……

否……言わんとしているそれから目を反らすよう

に思わず視線をスケッチブックへと注いだ…。

それに逃さないとスケッチブックを捲りその文

字を見せて、先程巻いたばかりの包帯に包まれ

た腕を握る。

「〈分かってるよね〉」

『っ………』

その言葉に応えなくなった俺に玲は気づいてい

るのだろう…

苛立ったように握る手に力をこめると乱暴に払

うように手を離して捲った頁を押し付けるよう

に掲げた。

「〈今は時間ないから、また〉」

『……』

それに小さく頷いてみせると、玲はそれを一瞥

して自室へと姿を消す。

『(…早く…行こう…)』

解放された重圧に知らずのうちに止めていた息

を吐き出して、情けなく小さく震える手を鎮め

るように鞄のひもを握りしめる。


……今は……早くこの息苦しい家から抜け出してアイツらに会いたい……


そんな思いに従うように足が急かすように動き

出した…。



……いつから……あいつの前で緊張するようになったんだろうか……。



いつの間にか弱くなった己に自嘲に笑みを溢し

て……。

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