【黒執事】モノクロの写真 2

【70】 ページ22

「乾杯！」



お嬢様が弾んだ声を出す





それに倣って私もグラスを傾けて

「乾杯」
と言った





「座らせといて今更だけど、セバスチャンって飲酒できるの？」




本当に“今更”ですね



「ええ、飲むことはできます。


人間と味覚は違いますから、美味しいとは思いませんが」


「不味いの？」


「いえ、そういう訳ではありません。
ただ、美味しさが分からないだけです」



へー、無味無臭って訳でもないんでしょ？


僅かに首を傾げながらグラスの中の琥珀色の液体を眺める




「飲みたくなかったら飲まなくて良いからね」




「御意」



お嬢様は私に命令なさることがない




これが適切な例えか否かは分かりませんが、どちらかと言えば友達や後輩と接するような感じです




ここが坊ちゃんとの大きな違いです



あの性悪坊ちゃんに仕えた後なので、何だか妙な気分です


執事と後輩とは大きな差がありますから




例えば、そうですねぇ





執事の人生に主人は口出しできますが、後輩はそんなことはない




いや、でも今の世の中では人権侵害とやらになるのでしょうか？




それから、嗚呼そうですね



後輩と先輩は結婚できますが、執事と主人はできませんね





いえ、特に深い意味はありませんよ？

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