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マナカの手にはいつか渡した匕首。
『…お前に出来んなら殺せよ。もう3発も食らってるし、痛くも何ともねえ』
『イザナ、家族が欲しかったの』
『声、なんで』
『家族、ほしい?』
『…………おまえが、欲しい』
柄にもなく、涙がぼろぼろと滑り落ちていく。
ああそうか。お前は喋れないんじゃなくて、喋らなかっただけなのか。本当は後悔してた。お前の声、もう聞けないって思ってたから。
長いマナカの髪の毛がカーテンみたいに俺を囲いこんで、まなかとおれのふたりだけ。
『まなかと、』
『うん』
『まなかと、かく、ちょうがいれば、それでいい』
『うん』
『本当の、家族が、ほしい』
『うん』
マナカの暖かい手が俺の涙をそっとぬぐった。
ぽたり、ぽたりとマナカの目から雨みたいに涙が降ってくる。
『…イザナはプライドが高い子だから。自分からは、なかなか言えなかったんだよね。大丈夫、血の繋がりだけが、家族じゃないんだよ。
家族ってもとから"ある"ものだけど、少しづつ"なる"ものでもあるんだよ。
シンイチローくんが、君に万ちゃんの話を沢山したのは、君と万ちゃんが良い兄弟になれるからって、信じてたからなんだよ。』
いまさらかな。マナカは静かに泣いた。
『人間ってすごいね。大好きな人のためなら、どんな辛いことも苦しいことも怖いことだって、出来るの』
『…………マナカは、真一郎の女だってわかってるけど、』
『?』
『…けど、』
『けど?』
すきになったから、まなか、おれと、いっしょに、しんでほしい
俺は、マナカがはっと目を大きくさせて、手の力を緩めたのを見逃さなかった。
にぎっていた匕首を奪い取って、瞬間。
ゆっくりと、突き立てた。肉を裂く感覚が、生温い血が、手に残る。
マナカの身体が、ぐぐぐっと強ばるように固まった。
…俺に出来る、愛のカタチがこれだっただけだ。
マナカの小さな口から、真っ赤な血が溢れて、服を濡らす。マイキーが掠れた声で、マナカの名前を呼んだ。隣の鶴蝶は『なにしてんだよ、イザナっ!?』と俺の肩を掴んだ。
とさり。と俺の上に落ちたマナカが、苦しそうに小さく呻くのを聞いて、自嘲する。
うらやましかったんだ。おまえが。
みんなから、愛されるおまえが。
だからさ、ゆるしてくれよ。
まなかだけは、おれにくれよ、マイキー。
『…なぁマイキー。俺が救えるか?
救いよう、ねえだろ____』
マナカ。俺が王なら、后はお前しか居ないから、
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作者名:亜秀 | 作成日時:2022年2月6日 20時