検索窓
今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:35,561 hit

34 ページ40




『うるせぇえええええ!!!!』


第7埠頭に響き渡るほど大きい、カクちゃんとイザナの咆哮。
思わず、会話をしていたドラケンくんたちも声のした方に視線を移した。

『……あ、』

おれは、口を押さえて、一点を凝視する藤宮まなかの視界の先を追い掛けると、

『き、稀咲、』

銃を構えた稀咲が、躊躇なく引き金を引く瞬間。



劈く金属音。


のち、恐ろしいほどの静寂。




『……カクちゃん!!!!』

きーんきーん、という耳鳴りの後で、カクちゃんはごぼりと呻いて赤黒い塊を吐き出した。


『…邪魔なんだよ、てめーは。

…なんども、なんども、繰り返し考え抜いた計画も花垣に潰された!マイキーが使えなくなった今、俺はイザナを媒体にするしか無くなった!!

鶴蝶、テメェは、邪魔なんだよ』


血走った稀咲の目にもう迷いはない。確実に、次でカクちゃんを殺そうとしてる。

絶句するヒナの目を塞いでおいた方がいいものかと迷っているうちに、またも銃声が3発。埠頭にこだました。


『……え!?』
『イザナ!?』


カクちゃんを庇って3発全部、身体で受け止めたイザナがゆっくり、ゆっくりと地面に崩れ落ちていく。

『なんで、なんで、イザナが!お前が下僕を庇うんだ!?』

『てめぇ……いざな、何やってん、だよ』

『……ったくよ、下僕のくせに、てがかかる…。

からだが、かってにうごいちまった』

イザナを撃ち抜いて動揺したのか、稀咲は尻もちをついて、苦しそうに浅い呼吸を繰り返した。ぎょろ、ぎょろと、冷静を欠いた瞳でイザナとカクちゃんを交互に見やっていた。


『……マイキー、おまえに、はなしておきたいことがある。

天竺の、負けだ』

『……イザナ』

『ふざけんなっ、俺がいうのはいい、おまえが…おまえが、それを言うな……!』

『はは、んだよそれ。わけわかんねーヤローだな』

『…イザナ、なんで俺なんか庇った?お前は王だろ?俺をゴミのように捨ててでも、お前はの時代をつくらなきゃ、いけないんだ』

それが、王だろ、イザナ。

カクちゃんの声がぶるぶると震えて、悔しそうに地面を拳で叩いた。

『……おれらの、じだい、だよ』

『……え?』

『ごめんな、鶴蝶。でも、おれにはさ、お前しか、いないから』

……イザナが浮かべたのは、ありえないくらい爽やかでスッキリとした笑顔だった。

35→←33



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.5/10 (39 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
71人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:亜秀 | 作成日時:2022年2月6日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。