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『うるせぇえええええ!!!!』
第7埠頭に響き渡るほど大きい、カクちゃんとイザナの咆哮。
思わず、会話をしていたドラケンくんたちも声のした方に視線を移した。
『……あ、』
おれは、口を押さえて、一点を凝視する藤宮まなかの視界の先を追い掛けると、
『き、稀咲、』
銃を構えた稀咲が、躊躇なく引き金を引く瞬間。
劈く金属音。
のち、恐ろしいほどの静寂。
『……カクちゃん!!!!』
きーんきーん、という耳鳴りの後で、カクちゃんはごぼりと呻いて赤黒い塊を吐き出した。
『…邪魔なんだよ、てめーは。
…なんども、なんども、繰り返し考え抜いた計画も花垣に潰された!マイキーが使えなくなった今、俺はイザナを媒体にするしか無くなった!!
鶴蝶、テメェは、邪魔なんだよ』
血走った稀咲の目にもう迷いはない。確実に、次でカクちゃんを殺そうとしてる。
絶句するヒナの目を塞いでおいた方がいいものかと迷っているうちに、またも銃声が3発。埠頭にこだました。
『……え!?』
『イザナ!?』
カクちゃんを庇って3発全部、身体で受け止めたイザナがゆっくり、ゆっくりと地面に崩れ落ちていく。
『なんで、なんで、イザナが!お前が下僕を庇うんだ!?』
『てめぇ……いざな、何やってん、だよ』
『……ったくよ、下僕のくせに、てがかかる…。
からだが、かってにうごいちまった』
イザナを撃ち抜いて動揺したのか、稀咲は尻もちをついて、苦しそうに浅い呼吸を繰り返した。ぎょろ、ぎょろと、冷静を欠いた瞳でイザナとカクちゃんを交互に見やっていた。
『……マイキー、おまえに、はなしておきたいことがある。
天竺の、負けだ』
『……イザナ』
『ふざけんなっ、俺がいうのはいい、おまえが…おまえが、それを言うな……!』
『はは、んだよそれ。わけわかんねーヤローだな』
『…イザナ、なんで俺なんか庇った?お前は王だろ?俺をゴミのように捨ててでも、お前はの時代をつくらなきゃ、いけないんだ』
それが、王だろ、イザナ。
カクちゃんの声がぶるぶると震えて、悔しそうに地面を拳で叩いた。
『……おれらの、じだい、だよ』
『……え?』
『ごめんな、鶴蝶。でも、おれにはさ、お前しか、いないから』
……イザナが浮かべたのは、ありえないくらい爽やかでスッキリとした笑顔だった。
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作者名:亜秀 | 作成日時:2022年2月6日 20時