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ぶぉん、とバイクの排気音がすぐ近くで聞こえた。

取り出し口から缶ジュースを2本抜き取ったエマちゃんが音の方に目を向ける。

『え?』
『ん?』

その音はどんどんと近付いてくる。
そして、運転手の後ろからバットを持った…

『稀咲!?』

エンジン音とともに雄叫びを上げながら、バットを振り上げる。


咄嗟に身を縮めた俺は、風を切る音と、少し後ろで鳴り響いた金属音と、鈍いく重い音を聞いた。


…おずおずと頭をあげる。まだ、心臓がばくばくと破裂しそうなくらい跳ねている。


なにがおきた?


こつん。踵に何かが当たった。


なにが、おきたんだ。


俺の後ろで倒れるエマちゃん。
柔らかそうな金髪に、真っ赤な血が流れていた。


言葉が出ない。状況を呑み込めない。


なんだ。稀咲がやったのか。
稀咲は、俺じゃなくて、エマちゃんを狙った?


『終わりだ、花垣武道』


エンジンを吹かせて、風のごとくバイクで走り去る稀咲を追いかける気力は無かった。崩れ落ちるように、エマちゃんに駆け寄る。



『エマちゃ、ん?』

分かってた。
稀咲は、マイキーくんを落とすためなら、女にまで手を出す。

『エマちゃん…』

こんなことまで、やる、なんて、

『エマちゃん!!』


……俺は馬鹿だ。

ドラケンくんを救っても、
一虎くんを救っても、
稀咲を東卍から追い出しても、
大寿くんを救っても、

結局何も変わらなかったのは、これだったんだ。エマちゃんだったんだ。


『……エマちゃん…目ぇ、覚ましてよ……

こっちで、死んじまったら、救えないんだ……』


…たのむ……目を覚ましてくれよ……!


『エマちゃんっ!!!』

『…エマ?』

『……ごめ、ん、マイキーくん、おれ、おれ、』

『何があった?』

『ばいくが、つっこんできて、えまちゃ、んが、はねられました、』

『……は?』

『き、さきに…はねられ、て』

『……タケミっち、俺の背中にエマ乗せて!』

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作者名:亜秀 | 作成日時:2022年2月6日 20時

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