奇跡51 -銀時side- ページ12
「A殿と初めて会った時の夢だ。体を震わせているにも関わらずどこか力強い目で‟不審な動きを見せたら殺しても構わない”と言い切ったあの日の夢を見た」
湯気の立つ茶を啜り、懐かしむように鰯雲が広がる空へと視線を投げ儚げに笑う。
(・・初めて会った日か、)
もう随分昔の事のはずなのに、昨日の事のように思い出されるソレに俺も思わず笑ってしまった。
あの日俺はすぐアイツに惚れた。
真っ直ぐで、いつもニコニコして、素直で、純粋で――…どんどんあいつを好きになって。喧嘩した日もあった、その倍笑いあった日もあった。
月夜の下、頬を流れる涙を拭い何回もキスをした。お前が好きだと、必ず帰って来ると約束した。
「…少々野暮な事を聞く、」
「なんだ?」
「銀時、お前はまだA殿の事は好きか…?」
未だ果たされることのない約束。しかし、その約束に期限はない――。
「――――…あいつ以上の女が表れねぇ限り、それは変わんねぇな」
今まで生きて来て、あいつ以上の良い女に出会った事はない。それはきっと、これからも変わらない。
明日か、明後日か。はたまた十年後か、死ぬ間際か。
いつ起こるか分からない‟奇跡”と言うものに縋って、俺は日々を生きていく。
「…そうか」
嬉しそうに、しかし少し悲し気に笑うヅラを横目に俺は最後の団子を口に入れた。
「――――さて、そろそろ俺ァ帰る」
傾き始めた太陽を見て、家に帰るため腰を上げる。コンビニに行ってくると言って出て来たのに、これ以上長居すればあいつらに心配かけちまう。
ご馳走さん。そう言って踵を返す。―――――しかし、
「…っ!待て、銀時!!まだ帰ってはダメだ!!」
「はぁ??おい、ちょっ…!離せよ!!」
何かを思い出したような顔をした後、俺の腕を掴み引っ張るヅラ。
「お前がまだ家に帰らないと言えば離してやろう」
「だから意味分かんないんだけど。何なのお前」
今までしんみりした雰囲気流れてたじゃん。なに今のこの状態。
意味が分からない事を言うヅラ。しかしこのままではきっとこの手を離さないだろう。
「・・・・分かった分かった。まだ家に帰んねぇから、手ェ離せヅラ」
「そうか!じゃああと30分は帰るなよ!!」
そう言うと満足げに笑って「じゃまた後でな」と言って走り去っていった。
「は?30分って…、っておい!どういうことだヅラ!!」
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凛 - 最高です!胸がどきどきして止まらなかったです!泣きそうになりました。 (2022年12月1日 19時) (レス) @page26 id: 2bc0f45ebb (このIDを非表示/違反報告)
Oub48c373260fof(プロフ) - 完結おめでとうございます!最後の終わり方がとてもよかったです。泣きそうになりました(泣)とても素晴らしいですね。とても気に入りました。また読みたいです。 (2017年10月9日 21時) (レス) id: 2fce3fa0b4 (このIDを非表示/違反報告)
紅華(プロフ) - 総悟13(低浮上)さん» ありがとうぅぅ(* ハ)やっとやっと完結できたよ…!!いつも応援してくれてありがとうね!ほんと感謝しかない!!! (2017年10月9日 18時) (レス) id: c24c6aa26f (このIDを非表示/違反報告)
総悟13(低浮上)(プロフ) - 完結おめでとう!!ずっと待ってた!!とても素晴らしい最後だった、本当に!!こんなに素晴らしい作品をありがとう!! (2017年10月9日 17時) (レス) id: 56f522caa1 (このIDを非表示/違反報告)
ミリア - 凄く気に入った作品で大好きですもし今後他の作品を作る予定があったら銀魂の銀時か高杉の姉か妹がワールドトリガーかリボーンかアニメKの世界にトリップか転生した作品が読んでみたいです説明が下手ならすみませんこれからも体にきよつけて更新頑張って下さい (2017年9月13日 16時) (レス) id: 14f5017be6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅華 | 作成日時:2017年1月26日 18時