354、謎の少年 ページ8
「西村Aさんだよね」
謎の少年はAの顔も名前も知っているようだが、Aの方はその少年のことなど何一つ知らない。
Aが質問するよりも早くその少年から発せられた言葉は、意外なものだった。
「出口はこっち…ついてきて」
「っと…」
手を引かれ、謎の少年と共に走り出した。
引っ張られる形で長い廊下を進んでいる間、混乱している頭の中を整理しようとする。
この人、誰？
出口って…私をここから出してくれるの？
…いや待て。オリオンの人だってことも考えられる。
「あ…あの…」
「安心して。僕はオリオンの人間じゃない。むしろ逆」
Aの心を先読みしたように少年が口を開いた。
「逆？」
「とりあえず話は後で。今はここを抜け出す方が先」
そう謎の少年は冷静に話す。
曲がり角から廊下を覗き誰もいないことが確認できると、再び手を引いて走り出す少年。その姿から、本当にここを連れ出そうとしてくれているように見えた。
この人がどうして自分を助けてくれるのかは分からないけど、きっと悪い人なんかじゃない。そう感じた。
空はすっかり暗くなっており、ほんのり肌寒い。
ジャージのポケットに入っていた携帯を開くと、なんと夜の7時だった。しかも明日人を捜しに行った日から丸1日経っている。
どんだけ寝てたのよ私！？と心の中で驚くAとは真逆に
「…意外と簡単に出られたな」
と、少年は表情一つ変えないが内心驚いているようで、ポツリと呟いた。
それもそうだ。無事建物を抜け出すことに成功したのだから。それも簡単に。奇跡的にSPにも会うことなく。
「これが、オリオンの本拠地」
少年が先程までAが閉じ込められていたビルを見上げながら説明してくれた。目の前に広がるのは「ORION」のロゴが目印の大きなビルだった。
ビルの壮大さに絶句するとともに、…ああ、やっぱりベルナルドさんはオリオンの人なんだな…。それを実感させられて泣きそうになった。
「…大丈夫だった？」
そんなAの顔を覗き込み、少年が聞く。
「誰にも、何もされてない？」
何もされてない…と言えば嘘になるけど…
「はい、大丈夫です」
と平静を装い言った。
「…本当に？」
少年は察しが良いのか、ずいっと詰め寄ってくる。
「ほ、本当です」
「ならいいんだけど…」少年は安心した様子でそれ以上問い詰めては来なかった。
嘘をつくことに罪悪感はあったが、初対面の人に何かしらの心配はかけたくなかった。
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飛鳥 - いちいちパスワード認証がでるのですか？なぜですか？ (2020年3月25日 22時) (
レス) id: 5955d179f7 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 沙希子さん» あたたかいコメントありがとうございます！最近更新が遅れ気味で大変申し訳ございません。最終回に向けてこれからも更新を頑張っていくつもりですので楽しんでいただけると幸いです。 (2019年11月17日 10時) (レス) id: bcd97f376b (このIDを非表示/違反報告)
沙希子(プロフ) - 更新焦らず頑張ってください!続き凄く気になります。 (2019年11月17日 6時) (レス) id: 03fe093666 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - そそそさん» コメントありがとうございます！1番ですか！？とても嬉しいです！ありがとうございます！！更新が大幅に遅れてしまい大変申し訳ございません。これからも頑張りますのでよろしくお願いします。 (2019年10月23日 18時) (レス) id: bcd97f376b (このIDを非表示/違反報告)
そそそ(プロフ) - 今まで見たイナアレ小説の中で1番おもしろいです。更新楽しみにしています！ (2019年10月23日 10時) (レス) id: 924231b153 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅葉 | 作成日時：2019年9月29日 21時
