353、覚悟 ページ7
「そんなみんなを裏切るくらいなら…」
溢れていた涙を拭ってベルナルドの目を真っ直ぐ見つめた。
「今ここで舌を噛み切った方がまだマシですよ」
キッと、迷いの一切ない顔を向けて断言する。
しゃくり上げながらも、はっきりと自分の意見を伝えた。流石に過言だと思われそうだが、A自身そのくらいの覚悟は持っていた。
今のはこれから何をされるのも覚悟の上での発言だった。何があっても、Aは屈しないつもりだから。
だがこのAの姿を見たベルナルドに、変化が現れた。
ベルナルドの視線が彷徨っている。
まるでベルナルドから焦りが垣間見えた気がした。
服の下へと伸ばされたまま動かなかった手が、Aから離された。
Aも予想外のベルナルドの反応に驚きを隠せなかった。
「…もういい」
ベルナルドはそれだけ言い残し、Aから離れた。
「え…?」困惑のあまり素っ頓狂な声が出るA。
ベルナルドはAと目を合わせることのないまま、ネクタイの緩みを直して扉に向けて歩き始めた。
ベルナルドが扉に手をかざすとロックが外れるような音がして、扉は簡単に開いた。
「べ…」
Aが呼び止める前に、バタンと扉が閉まる。再び静寂が走る部屋に一人取り残され、しばらく呆然としていた。
…何なの…?
「何だったのよ…」
ポツリと呟いたつもりだったが、静か過ぎるあまりその小さな声も部屋の中に響き渡る。
最初はようやく手に入れたとか言ってたのに、どういうつもり…?…いや、とりあえず助かったからよしとした方が良いのか?
(…そうよ、ひとまず危機は回避できたんだから…)
けど、震えと涙はしばらくおさまらなかった。
…いや、泣いてる場合じゃないんだ。まずはここから出なきゃ。
涙を拭い服の乱れを直してベッドから降り、先程はびくともしなかった扉を押してみる。すると今度は簡単に開いた。
「わ…」
あっさりと開く扉に驚くA。
ともあれこれで廊下に出ることができた。…が、
「出口はどっちだ…」
と言う問題に直面しており、広い廊下でキョロキョロする。
だがこんなところでいつまでもじっとしてはいられないので、運に任せて歩みを進めようとした。
その時。
「ねえ、君」
「っ!?」
後ろから誰かに声をかけられ悲鳴を上げそうになったが、すんでのところで堪えた。心臓が飛び出そうになりながら恐る恐る振り返る。
そこにはAと同じ年くらいの男の子が立っていた。
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飛鳥 - いちいちパスワード認証がでるのですか?なぜですか? (2020年3月25日 22時) (レス) id: 5955d179f7 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 沙希子さん» あたたかいコメントありがとうございます!最近更新が遅れ気味で大変申し訳ございません。最終回に向けてこれからも更新を頑張っていくつもりですので楽しんでいただけると幸いです。 (2019年11月17日 10時) (レス) id: bcd97f376b (このIDを非表示/違反報告)
沙希子(プロフ) - 更新焦らず頑張ってください!続き凄く気になります。 (2019年11月17日 6時) (レス) id: 03fe093666 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - そそそさん» コメントありがとうございます!1番ですか!?とても嬉しいです!ありがとうございます!!更新が大幅に遅れてしまい大変申し訳ございません。これからも頑張りますのでよろしくお願いします。 (2019年10月23日 18時) (レス) id: bcd97f376b (このIDを非表示/違反報告)
そそそ(プロフ) - 今まで見たイナアレ小説の中で1番おもしろいです。更新楽しみにしています! (2019年10月23日 10時) (レス) id: 924231b153 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅葉 | 作成日時:2019年9月29日 21時