372、絆 ページ26
「とにかく、大会が終わって離れ離れになっても、俺たちが仲間だということは変わりません」
言いながら、Aの肩に手を置いた。
「俺たちの関係は、簡単に壊れるほど脆いものではないはずですよ?」
Aはハッとさせられた。確かにこれまででチームの絆はどこにも負けないくらい深まってきたはずだ。それがそう簡単に壊れるわけがない、そう信じたかった。
「そう考えているのは俺だけじゃないです。だから、みんな何があってもいなくなったりしませんよ」
そして一星は眩しいくらいの笑顔を見せる。
「先輩は一人じゃありません。俺が保証します!」
Aは頼もしい後輩の姿を見て、鼻の奥がツンと痛くなった。
“一人じゃない”……その言葉で、先程のモヤモヤが嘘のように消えていく。
涙を必死に堪えた後、Aにようやく笑顔が戻ってきた。
「……ありがとう。やっぱりお世話になってるのは私の方だね、これじゃ」
一星には既に恩を返し切れないくらい助けられていると思う。
「何言ってるんですか。先輩が手がかかるのなんていつものことなんですから気にしないでくださいよ」
「………」
Aが言い返せず悔しい顔をしていると、一星は「冗談です」と笑った。本当に冗談なのかは怪しい。
すると、急に真剣な表情に戻った。
「今みたいに、悩みがあれば何でも話してください。後輩に迷惑かけられないとか寂しいこと言わないでくださいね。仲間なんですから」
仲間、と改めて口にして一星は照れくさそうだが、これは彼の本当に望んでいることのようだ。
そう言ってくれた一星をいつものように可愛いではなく、ちょっとかっこいいと思ったのは内緒だ。
「…仮に誰かがいなくなったとしても、俺は絶対に先輩のそばにいます」
周りに人がいない中、一星が密かに呟く。
「そして仮に…先輩が誰を選んだとしても、A先輩はいつまでも俺たちの大切な仲間ですから」
___大会が終わっても、俺たちが仲間だということは変わりません。
一星と別れた後も何度も、言われたことを頭の中で反芻していた。一星の数々の言葉のおかげで、Aは少なからず落ち着きを取り戻せた。
(後輩に励まされるとは、どっちが先輩なんだか…)
でも、嬉しかった。
お世話になってるのはやっぱり自分の方だと身に染みて感じた。
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飛鳥 - いちいちパスワード認証がでるのですか?なぜですか? (2020年3月25日 22時) (レス) id: 5955d179f7 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 沙希子さん» あたたかいコメントありがとうございます!最近更新が遅れ気味で大変申し訳ございません。最終回に向けてこれからも更新を頑張っていくつもりですので楽しんでいただけると幸いです。 (2019年11月17日 10時) (レス) id: bcd97f376b (このIDを非表示/違反報告)
沙希子(プロフ) - 更新焦らず頑張ってください!続き凄く気になります。 (2019年11月17日 6時) (レス) id: 03fe093666 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - そそそさん» コメントありがとうございます!1番ですか!?とても嬉しいです!ありがとうございます!!更新が大幅に遅れてしまい大変申し訳ございません。これからも頑張りますのでよろしくお願いします。 (2019年10月23日 18時) (レス) id: bcd97f376b (このIDを非表示/違反報告)
そそそ(プロフ) - 今まで見たイナアレ小説の中で1番おもしろいです。更新楽しみにしています! (2019年10月23日 10時) (レス) id: 924231b153 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅葉 | 作成日時:2019年9月29日 21時