295、良いチームメイト ページ48
吉良「お前にはまあまあ世話になってるしな」
基山「……良いよ。俺はそんな人いないし」
タツヤはヒロトのその気持ちだけ受け取ることにした。
吉良「…本当か？」
基山「…ああ。…それに、たとえ俺に好きな人がいたとしても…別に結ばれなくて良いと思ってる」
吉良「は！？何で！」
基山「その人が本当に幸せなら、俺を選んでくれなくたって構わないさ」
好きな人の幸せが一番だから。タツヤはそう淀みなく声にしながら遠くを見つめている。
吉良「…お前、本当はいるだろ。好きな奴」
ヒロトがタツヤに探りを入れるように目を凝らす。
基山「…いないって。想像で言ってるだけだよ」
吉良「理解できねーな。好きな奴いたらどんな手使ってでも奪ってやりたいもんだろ」
消極的な考えのタツヤに眉をひそめるヒロト。タツヤはそんなヒロトに気づかれないよう小さくため息をこぼした。
…確かにお前はそうだな。でも俺はそうじゃないから。そう何度も自分に言い聞かせて。
貴女「…でも、私が強くなれたのも私一人の力じゃないですけどね」
Aは仲間たちのことをクラリオに話す。仲間たちから自分の噂をされていることなど知らずに。
クラリオ「…良いチームメイトなんだな」
貴女「はい。だからここまで来ることができました」
幸せそうに自分の仲間たちを見つめるAをクラリオは微笑みながら見ていたが、やがて真剣な表情に戻った。
クラリオ「だが、まだ喜ぶのは早い」
その言葉の意味を理解しているAも大きく頷く。
オリオンに対抗する者同士、まだまだ気は緩めないし、チームとしても、まだまだ進化を止めるつもりはない。
クラリオ「では、また」
クラリオは最後にAに笑いかけて、フィールドを後にした。
貴女「はい。ありがとうございました…！」
Aはクラリオが見えなくなるまで、深く頭を下げていた。
クラリオさんだけじゃない。ここまで、どれだけの人に助けられたか。
ありがとう、みんな。私、自分のこともっと愛してあげられそう。
そして…
貴女「…ありがとうございます。ベルナルドさん」
私、殻を破れました。
Aは清々しい表情でベンチにいる仲間の元へ走った。
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作者名：紅葉 | 作成日時：2019年8月23日 13時
