276、一番辛いのは ページ29
クラリオは円堂、そしてAの元へ歩み寄るなり、頭を下げた。
クラリオ「…すまなかった。オリオンの使徒は全て排除したつもりだったが…」
「心からお詫びをする」と、クラリオはイナズマジャパンに、そして特にAに対して申し訳ない気持ちでいっぱいだった。Aがこの試合を楽しみにしていたことを知っていたからだ。
クラリオ「…結果、貴女に嘘をついたことになってしまったな」
貴女「そんなことない！」
クラリオさんが嘘をついたことなんてない。そう分かってもらうために、必死に首を横に振る。
クラリオ「いや、あれだけ貴女に試合を楽しみにしていると言っておきながらこれだ」
グッと強く拳を握るクラリオ。
クラリオ「…どれだけ謝っても許されることではないことは分かっている」
貴女「……」
クラリオは誰より自分を一番責めており、悔しさが滲み出ていた。危うく誰かを傷付けるところだったと、士郎が止めてくれたとはいえクラリオは気に病まずにいられない。
だがAはそんなクラリオに向け、笑顔を見せた。
貴女「…知ってますよ。あなたがそういうのを許さない人だってことなら、とっくに」
さっきだって明日人が危険な目に遭わないように忠告してたし。あなたの正々堂々戦いたいって言う強い意志、今まで何度も見て来ましたから。
私がそんなあなたにどれだけ助けられたと思っているんですか。
貴女「…あの人だって、誰かを悲しませたくてあんな選択したんじゃないはずです」
バラハの運ばれていった先へ目を向けながら言う。
それに、一番辛いのはクラリオさんやバラハさんに決まってる。だからせめて、私は悲しんでちゃダメだ。クラリオさんが少しでも安心できる為には。
貴女「…だから…最後までしっかり戦いましょう。試合はまだまだこれからですから！」
「バラハさんのためにも」Aがそう言うと、クラリオはAを真っ直ぐに見つめて言った。
クラリオ「…本当に不思議な人だな」
貴女「…はい？」
その光景を見ていた円堂はにかっと笑って言った。
円堂「クラリオ、ここからが本当の勝負だな！」
クラリオ「ああ。…気を遣わせてすまなかったな。もうすぐ試合が再開する。戻ろう」
貴女「…あ…はい！」
いつものクラリオに戻ったことにホッとした。
良かった。…まあクラリオさんなら私なんかに励まされなくても大丈夫だろうけど。
…でも、人にああ言っておきながら私自身はしっかり戦えているのだろうか…。
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作者名：紅葉 | 作成日時：2019年8月23日 13時
