275、誇り高きスペイン代表 ページ28
＿_日本の選手よ、すまない。俺には命令に従う義務があるんだ＿_
バラハが不穏な心の声を呟くと、ポケットの中で何かを掴み、向かって来る明日人の進路にそれを撒いた。
「お前、何を！？」クラリオはバラハのその行為が目に留まった。
クラリオ「それ以上前に進むな！」
貴女「？」
Aにはクラリオの様子から異変を感じとるが、明日人には忠告が届かない。
その瞬間、士郎がアイスグランドを撃ち、明日人は転倒で免れた。
貴女「明日人！」
士郎「大丈夫かい、稲森くん！」
Aや士郎が明日人の元へ駆け寄る。
明日人「吹雪さん、何でこんなことを？」
士郎「あれさ」
士郎が指をさした方には、トゲのついた撒菱が散らばっていた。
貴女「…何これ…？」
士郎「あのまま突っ込んでいたら、稲森くんは足に大怪我を負っていた」
貴女「…！？」
…だからクラリオさん、前に進むなって…？
明日人「まさか…スペイン代表にオリオンの使徒が？」
貴女「えっ…」
「いや、それは…」何故か口ごもる士郎。
不動「吹雪、お前なぜあれが来ると分かった？最初から知ってるように見えたぜ」
士郎「…今日は勘が冴えているのかな」
不動の問いかけにも士郎は冷静に流した。
「どういうことだバラハ」
貴女「…！」
クラリオの声でAもそちらに反応した。
見ると、クラリオがバラハを問い詰めていた。
バラハ「お前と共に世界の頂点に立つ…。その夢を叶えるために、俺は悪魔に魂を売っちまったのさ」
バラハがソックスを下ろすと、怪我の跡の上から刻印が刻まれていた。
バラハ「ヨーロッパ予選で大怪我を負った俺は、世界大会への出場を諦めていた。そんな時、オリオン財団が最先端の治療を施すと申し出てくれた。だが交換条件として…」
クラリオ「オリオンの使徒となることを命じられたのだな」
バラハ「ああ」
クラリオ「お前は、誇り高きスペイン代表に泥を塗った」
その言葉に、バラハは静かに頷いた。
その光景を見ていたAは涙が出そうになった。
試合が再開されるとすぐに、クラリオは「ダイヤモンドレイ」を撃った。
明日人「あんなところから！？」
そのシュートが向かう先はバラハだった。
貴女「…っ！」
Aは咄嗟に目を強く閉じた。
クラリオ「バラハ、お前の思いは私が背負う」
シュートをもろに受けたバラハは担架に乗せられ、交代を告げられた。
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作者名：紅葉 | 作成日時：2019年8月23日 13時
