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いい奴ほど分からない ページ2

「ーーー今回は私の我が儘を引き受けてくれて、ありがとう。君たちも忙しいのに…感謝してるよ」




にこり、微笑みながらそんな言葉を口にするのは弦楼(げんろう)家当主の男である。
その弦楼家当主の言葉に今度は向かいに座っていた男が人の良い笑顔を向ける。黒の隊服に身を包むその男の名は近藤勲。我が真選組の局長である。





「いやいや、滅相もありません弦楼殿。弦楼殿が私達を信用してくださりとても嬉しく思います」


「あなた方のお噂はかねがね聞いております。とても素晴らしい人々だと」



柔らかい物腰に、上品な佇まいは流石エリートとでも言おうか。
目の前の男。弦楼碧(げんろうみどり)、古くから将軍に仕える家柄で幕府の重鎮の1人だ。噂では他の威張っている上の奴らとは違い、民衆を尊みよりよい国を作って行こうと心掛けている良い人らしい。

まぁ、お上から煙たがられてる俺たち真選組にも威張らずに低姿勢で話しかけてくる辺りはその噂も本当のように思われるが…。





(ーー嘘くせェ野郎でィ)





近藤さんの背中を視界の端に映しながら、俺は目の前のそいつに嫌悪を感じていた。



こう言う奴の方が裏で何考えてるか分からねェもんだ。性格や口の悪い奴の方がよっぽど人間らく人道的である。



そう思っちまうのは俺の心が荒んでるからか…否定はしねぇがな。




「では頼みます。真選組の皆さん」

「責任をもって守らせて頂きます」



ペコリとお辞儀をする近藤さんに合わせて俺と土方も頭を下げる。


それを見た弦楼はニコリと笑い






「…あぁ、そうだ2つだけ約束して頂けますか」


「約束、ですか?」



「えぇ、何簡単なことですよ。私の宝を決して誰も見ないこと、そして決して部屋の外に出さないこと」





俺にはその笑顔が酷く歪んで見えた。

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作者名:くれか | 作成日時:2018年7月28日 13時

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