Cascade 2

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北山はいつも通り玉森や宮田と話している。


一人分離れた定位置に座るが、北山は俺を見ない。

きっと今までだって視線なんて向けられていないはずなのに、見てくれないことを寂しいと思う。



ゲストの女優が座り、いつも通り収録が始まる。

バレンタインデーが近いことから恋愛トークに花が咲いた。

北山はいつもと同じように俺に話を振り、さすが藤ヶ谷さんなんて言っている。


女優が北山に寄っているのが気になって、狭いのかなと少し千賀に寄ってみた。

だが距離は変わらない。


そんなこと気にしたことがないのに、今日は細かいことがいちいち気になる。


「私、北山さんにチョコあげちゃおうかな」


この歳になるとチョコなんて早々もらわないなんて定番のトークをしていると、そう女優が言った。


「ほんとですかー？ 優しさが染みるなぁ」


一瞬固まった空気を和らげるように笑う北山にその場は治まったが、俺の心はざわめいていた。


北山はアイドルで沢山の女性から愛される存在だ。

何回もモテそうだと思ったし、自分だって同じ立場なのに何故か忘れてしまっていた。

きっと俺は北山を、いつの間にか仕事仲間という枠ではないところに置いてしまっていたんだ。
こんなに心がざわざわしていたのも既に北山を友達のように感じていたからなんだと思うと、衝撃と同時に妙に納得した気持ちになった。

渉と同じかと言われたら何か違うが、きっと別のベクトルの友情なのだろう。


すっきりしたような気がしていたのに女優と北山の距離が近いのがやっぱりに気になって、なんだかよく分からない内に収録は終わった。



「うーん、疲れてるのかな」


なんだか乗り切れない気分に肩を揉みながら廊下を歩いていると、お疲れですかー？ なんて高めのテンションで絡んでくる渉。


「……なんかテンション高いんだけど」
「あ、そう？ 今日の収録上手くいったからかも」


渉が活躍したところなんかあったか？ と思ったが正直、収録のことはあまり覚えてないから適当に流す。


「今日なに食べる？」
「ふーん」
「太輔、聞いてないだろ？」
「え？」
「心ここに非ずって感じ。ほんとわかりやすいわ」
「……ごめん」
「別にいいけど。じゃあ今日は鍋ね、太輔なんでもいいでしょ？」


本当に何でもよかったからうん、と頷いたら渉は目を大きくしたあと苦笑いした。

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