Cascade 2

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せっかくの時間をこんな気持ちで過ごしたくないし、何より付き合ってくれている藤ヶ谷に申し訳ない。


「そう言えば最近ゲームはしてんの？」


だから例えどんな気持ちであろうと、一緒にいる時は笑顔でいようと思った。


「あー、最近は全然出来てない。やっと落ち着いてきたし、そろそろやろっかなと思ってるけど」
「年末忙しかったもんな」
「ありがたいことだけどね」


俺もそうだが、藤ヶ谷もだいぶ大人になったと思う。
昔は考える間もなく仕事に追われ、その状況がどんなに有り難いことか分かろうともしなかった。


「そろそろ舞台の稽古も始まるか？」
「んー、来月頭くらいからかな」
「観に行くわ」


今もこうやって仕事をさせてもらえているのは俺たちの努力はもちろん、周りの人たちのおかげだと思っている。

自分ひとりじゃなにも出来ない。

どれだけの人に支えてもらっているか、この歳になりやっと分かってきた。

それはきっとメンバー全員が同じ想いだろう。


「うん、ありがとう」


同じ想いを共有するメンバーがいてくれることの有り難さ、誰ひとり欠けてはいけない6人。

皆、大切でかけがえのない存在。


その中で藤ヶ谷だけ一歩前にいる。


「海？」


街の明かりが遠くに見えるようになってきたと思っていたが、どうやら海沿いに出たらしい。


「今はもう真っ暗だけど、夏は夕焼けが綺麗なんだよね」


藤ヶ谷の目が思い出すように細められる。


綺麗な横顔。

見惚れながら、その顔を他の誰かに見せたのかと思うと苦しくなる。


「そうなんだな」
「北山も見たら絶対感動すると思う」


一緒に行こうとは言わないんだろうなって、当たり前のことなのに前より苦しいのはやっぱり距離が近くなったなんて自惚れてしまっていたから。


上手い返事が思いつかなくて笑ってごまかした。

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