Cascade 2

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「藤ヶ谷の車ってカッコいいよな」
「そう？」
「なんか芸能人って感じ」
「それ全然褒めてねーだろ」


突然褒めだしたと思ったら、全然嬉しくないことを言ってくる。

芸能人みたいなんて、まるで成金と言われているようで嬉しくもなんともない。


「え、そう？ これくらの車乗ってると夢あんなって思うけど。やっぱすげーな！ て思われる方が夢与えるっていうか、男って感じじゃん」


え、そんな暑苦しい感じ？


昔から北山は男らしさに拘ってはいたが、まさかこんなところにまで男らしさを求めていたとは。

その暑苦しい思考に呆れると同時に無性に笑えてきて肩を震わせる。


「え、なんかおかしかった？」


急に笑い出した俺に目を丸くした北山はしばらく首を傾げていたが、ふっと目を細めたかと思うと


「お前が楽しかったらなんでもいいけど」


と言った。


その表情と声があまりにも優しくて、じわりと顔が熱くなる。

言った本人は飄々としたものだが、こっちは急にそんな態度でこられても対処に困る。


「……そろそろ着くから」
「ほーい」


なんと答えていいのかわからずそう言うと、気にしているのかしてないのか北山は呑気に答えた。


駐車場に車を止め、念のため店に電話を入れる。


一人で行く時はここまでしないが百貨店の一角だ。

北山と一緒に香水を選んでいるとことを見られるのはちょっとまずい気がする。

かと言って個室があるわけではないので、極力顔を見られないようにするしかない。


さっき買ったハットを箱から出し被ると、バックミラーで眼鏡をかけた自分の顔を確認する。


「ハットと眼鏡、絶対外すなよ」


そう言うと北山は分かってるって、とまたもや軽く答えた。

その態度に大丈夫かよと思ったが、北山なら大丈夫だと思っている自分もいる。


仕事に関してだけであれば北山以上に信頼している奴はきっといない。

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