66 ページ16
「ゆっくりしていってくださいね」
そう言って店員は部屋を出て行った。
その後姿に会釈したあと、良い人でよかったと言いながら北山は珈琲に口を付けた。
「んー、水出しコーヒーってさっぱりしてんだな」
「飲みやすいよね」
「すげー飲みやすい」
きっと北山は、水出しコーヒーを気に入ると思ってこの店を選んだ。
プライベートで北山のことを考えて行動するなんてどれくらい振りだろう。
なんだか恥ずかしくて変に普通を装う。
「うん、ケーキもコーヒーに合う」
店の雰囲気に慣れたのか、二人になるとバラエティー番組で見せるようなテンションは鳴りを潜め、北山は淡々とも言える穏やかさで話す。
公共の電波に乗っていない時の北山はそれほど口数は多くない。
頑張って話すのは気を遣っている時で、本当に気心知れた人の前だと率先して喋ることはあまりない。
「食う?」
ケーキが食べたいから見ていたと思ったのか、俺の前に皿を出してくる。
「食べたくて見てたんじゃないから」
「あ、そうなの? でも美味いから食ってみろよ」
ほら、と皿を押してくるので興味に勝てずフォークを指してしまう。
一口取って食べてみるとレモンが効いていて爽やかだ。
「美味しい」
「レモンの皮が入ってんのかなー。下のビスケットがも塩が効いてて、すげー美味い」
「北山って料理しないわりに味わかんだな。美味いもの食ってるから?」
「こんくらい普通わかるだろ」
少し素っ気なく聞こえるのは、照れているからだ。
以前はこの態度ですら苛々したが、俺自身余裕がなかったんだと今は分かる。
なんだか懐かしいような切ないような気持ちになって、ごまかすようにストロベリータルトにフォークを刺した。
安定した美味しさにうん、と頷きながら珈琲を口に含む。
視線を感じ前を向くと、北山と目が合った。
「なに?」
「いや、美味そうに食うなって」
「……食べる?」
さっきチーズケーキもらったし、と口に出してみると北山は笑い出した。
「そんな嫌そうに聞かれても食うとか言えねーだろ」
「え、別に嫌とか思ってない」
「めちゃくちゃ眉間に皺寄ってるけど」
そんなにか? と思い自分の眉間に指をやってみるがよく分からない。
451人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちび(プロフ) - めっちゃ引き込まれました、映像化して欲しいぐらいですわ、はいFKYの空気観、めっちゃ好きで仲良しな3人な感じで⚪︎読み応えありました、また読みにきますね⚪︎ (2023年3月21日 20時) (レス) id: ff59837987 (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - ちびさん» ちびさん、こんばんは。こんな長い話を読んで頂きありがとうございます!FKYがお好きなんですね(*´-`)そして汗かくぐらい応援して頂きありがとうございます!この話は長く書いてましたし思い入れのある作品なので楽しんで頂けて嬉しかったです。ありがとうございます! (2023年3月21日 20時) (レス) id: 4781cdc11c (このIDを非表示/違反報告)
ちび(プロフ) - めっちゃ楽しいです。私藤北と横尾さんな感じめっちゃ好きでミツ頑張っていけ、もうちょっとだと、もう汗かくぐらい応援しちゃいました、めっちゃ楽しかったし、横さん良い、アシストしますよね❤️さすがです、藤北素直になってよてね⚪︎ (2023年3月18日 10時) (レス) id: ff59837987 (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - 蒼井あゆみさん» 蒼井あゆみさん、初めまして!Kさんの気持ちに寄り添い胸を痛めて頂きありがとうございます!自分の気持ちの変化に戸惑うFさんとそんなFさんに戸惑い揺れるKさんを今後とも見守って頂けると嬉しいです。コメント本当にありがとうございました!(〃ω〃) (2019年4月15日 18時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
蒼井あゆみ(プロフ) - くらげさん、はじめまして。初めてコメントします。読み進めながらみっくんの感情の揺れに胸が痛くなります。藤ヶ谷さんの気持ちの変化がうまく伝わってほしい!と願っています。引き込まれています。続き楽しみにしています! (2019年4月14日 22時) (レス) id: d97694ef20 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:くらげ | 作成日時:2019年3月13日 0時