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ありがとーと笑うと、宏光はうんなんて少し照れくさそうに頷いた。
 

不思議なほど宏光の一挙一動が愛しい。

やっぱり一緒にいたいという想いが強くなって、風呂場に急ぐ。

警戒心がないわけじゃないがガードが緩いというか、一度心を許した相手は中に入れてしまう。兄貴肌で、頼られると無下にはできない。
そこに付け込んでいる自覚はあるが、こうも簡単に風呂を貸してしまうあたり心配にもなる。


風呂から上がると新しい下着とスウェットが置かれていた。履くと案の定丈が短くて笑ってしまう。


「髪ちゃんと乾かせよー」


タオルで頭を拭きながら戻ると声が掛かり、再び洗面台に逆戻り。鏡に映った自分の口元が緩々で恥ずかしくなった。

同棲ってこんな感じなのかなと思ったりして、一緒に暮らせたら幸せだと思う。


髪をしっかり乾かし再び戻ると、いい匂いがしている。


「宏光?」
「そこ座って、ちょっと待ってて」


椅子に座るとテーブルにどんぶりが置かれる。


「野菜がなくて悪いんだけど」


そこには玉子とネギが乗ったうどんがあった。


「作ってくれたの?」
「作ったってほどじゃないけど、あったかいもの食べた方がいいと思って」


罪悪感もあるかもしれないが、俺が風邪引かないか心配してくれている。

正直、風呂に入って熱いくらいだったが宏光の手料理なんて食べるに決まってる。


「嬉しい。いただきまーす」


両手を合わせると、宏光は少し照れくさそうに笑った。


「じゃあ風呂入ってくる。食ったら適当に流しに置いといて」
「え、食べないの?」
「おでんあるし」


そう言ってさっさと風呂場に行ってしまった。

二人でいるのに一人で食事なんて寂しいじゃんって思うけど、仕事終わりで早く風呂に入りたい気持ちもわかる。

家に入れてくれるだけでもラッキーなのに、風呂まで貸してくれてうどんも作ってくれた。


宏光は優しい。優しいから俺を突き放しきれない。

宏光の心に入りきれていないことはわかっている。もしかしたら、これ以上は無理なのかもしれないとも思う。でも諦めたくない。


今まで真剣に恋愛をしてこなかった俺は、諦め方を知らない。だからどうやって諦めたらいいかもわからない。


うどんを食べ終わり、食器を洗って水切りかごに置く。


テレビをぼんやり見ていると、宏光が髪を拭きながら戻ってきた。

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くらげ(プロフ) - tenさん» tenさーん!最後までお付き合い頂き誠にありがとうございます。最初はTさんが泣いて終わる予定だったのですが後味どうなんだろう…と今回の形にしてみました。喜んでもらえて良かったです。また読み返してやってください。コメント本当にありがとうございました! (2022年11月16日 22時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - seaさん» 良かったと言って頂けて安心しました。タイトルも気に入って頂けて良かったです。今後もよろしくお願いします!(*´-`) (2022年11月16日 22時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - seaさん» seaさーん!私こそ最後まで読んで頂きありがとうございます。書いてる期間が長すぎてこれ楽しみにしてくださってる方いるのかなと思うこともあったので、そう言ってもらえてとても嬉しいです。大人になると出てくる仕事や恋愛の悩みと成長を含めて書いてみましたが→ (2022年11月16日 22時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - mimotaさん» mimotaさーん!完結までお付き合い頂き誠にありがとうございます。感動しながら読んで頂けたなんてとても嬉しいです。これから色んなことがあると思いますが二人なら乗り越えていけると思うので妄想いっぱいしてくださると嬉しいです。いつも沢山ありがとうございます! (2022年11月16日 22時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - chaizoukunさん» コメントありがとうございます!私の作品が大好きだと仰ってくださり更には過去作も何度も読んで頂いて本当に嬉しいです。お気に入り作者登録がキリの良い数字になったら番外編を書こうかなとぼんやり思っておりますがそんな日が来るのか(笑)今後も宜しくお願いします (2022年11月16日 21時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くらげ | 作成日時:2022年7月1日 0時

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