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藤ヶ谷が家に来てから裕太と連絡を取り合うのも気が重くなり、ここ最近返事をしてない。

きっとそのことを言われるだろうとは思ったが、二時間も待たせてさよならとは言えずに家に入れた。


突き放せばいいのかもしれないが、裕太が悪いわけじゃない。

そういうどっちつかずの態度がいけないのかもしれないが、嫌われたくないと思ってしまう。



「あ、うどん食った? 体あったまってる内に寝ていいよ」


風呂から上がるとテーブルの上に器がなく、ちゃんと食べたんだと声を掛けた。


「泊まっていいの?」


敢えて口に出されると、うんと言いにくい。


「ここまできて帰れとか言わないだろ。ベッド使っていいから」


だがそれ以外の選択肢もなく答えると、裕太はじっと見つめてきた。


「ガヤとなんかあった?」


裕太はまっすぐだ。いつも正面からぶつかってくる。


「別に」
「だったらなんで俺のこと避けてたの?」
「避けて
「避けてなんかないとか言わないでよ」


それが少し眩しくて逃げ場を奪われる。


「本当に何かあったとかじゃなくて、俺の問題だから」


何かあったというほど動いてない。藤ヶ谷が踏み出した足を俺が止めてしまっている。

藤ヶ谷の言葉をただ「ありがとう」と受け止めれば可愛げもあるだろうし、何かしらの動きがあっただろう。


求めていたはずなのに止めてしまった自分自身に、どうしようもなく苛立ち焦っていた。

でもないものねだりと言われてもおかしくない心の問題だから、誰かに相談することじゃない。


「じゃあもう避けない?」


そんな風に言われるとうんと言わざるを得なくて、裕太の手腕に苦笑いする。


「……だから避けてないって」
「はいはい」


こうやって突き詰め過ぎないでくれるところも、裕太といて楽なところだ。


隣をポンポンと叩かれ、仕方なく座ると手を軽く握られる。


「なにを悩んでるのかわかんないけど、そんな時こそ俺を呼んでくれたらよくない?」
「ん?」
「宏光が悩んでることがなんであれ俺は傍にいたいし、こうやって手を握っててあげたい」


握られた手から温もりが伝わる。

その体温に思わず泣きそうになって、目に力を入れた。


「俺の前では我慢しなくていいんだよ。そのままの宏光でいいから」


裕太といたらこんなに思い悩むこともないだろうし、悩んだとしても察して包んでくれるのかもしれない。


それはとても幸せなことだろう。
 

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くらげ(プロフ) - tenさん» tenさーん!最後までお付き合い頂き誠にありがとうございます。最初はTさんが泣いて終わる予定だったのですが後味どうなんだろう…と今回の形にしてみました。喜んでもらえて良かったです。また読み返してやってください。コメント本当にありがとうございました! (2022年11月16日 22時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - seaさん» 良かったと言って頂けて安心しました。タイトルも気に入って頂けて良かったです。今後もよろしくお願いします!(*´-`) (2022年11月16日 22時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - seaさん» seaさーん!私こそ最後まで読んで頂きありがとうございます。書いてる期間が長すぎてこれ楽しみにしてくださってる方いるのかなと思うこともあったので、そう言ってもらえてとても嬉しいです。大人になると出てくる仕事や恋愛の悩みと成長を含めて書いてみましたが→ (2022年11月16日 22時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - mimotaさん» mimotaさーん!完結までお付き合い頂き誠にありがとうございます。感動しながら読んで頂けたなんてとても嬉しいです。これから色んなことがあると思いますが二人なら乗り越えていけると思うので妄想いっぱいしてくださると嬉しいです。いつも沢山ありがとうございます! (2022年11月16日 22時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - chaizoukunさん» コメントありがとうございます!私の作品が大好きだと仰ってくださり更には過去作も何度も読んで頂いて本当に嬉しいです。お気に入り作者登録がキリの良い数字になったら番外編を書こうかなとぼんやり思っておりますがそんな日が来るのか(笑)今後も宜しくお願いします (2022年11月16日 21時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くらげ | 作成日時:2022年7月1日 0時

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