君以外もう知らなくていい 4

168 F ページ18

　
　
　
北山は長めのショートボブを撮影に合わせて色を明るくしてるから、いつも以上に中性的だ。


今日は夏物のCM撮影。

俺が企画したシャツは上々の売れ行きで、玉森もチームのメンバーも喜んでくれた。

コーディネートを提案している既存商品の売れ行きも好調らしく、夏物は更なる展開をという話になっている。


今季の玉森デザインはドルマンスリーブのセットアップ。袖幅を広くしルーズ感を出すと共に、中に着るインナーを選ばないようにしている。

春物デザインの時サイドロープに着目していると思ったら、サイドスリットからダブルテープを覗かせていてなるほどと思った。
ドレープ感の強い素材に合わせているし、バックスリットも深い。パンツと同生地のスクエアタイプのダブルリングベルトは少し長く、垂らした時にアクセントになるようになっている。全体的に揺れを重視したデザインだ。


北山はアイボリーのセットアップにくすみピンクのインナーを合わせた姿でカメラの前に立っている。

三回目のCM撮影ともなればさすがに慣れたのか、指示された通りしっかり表情を作っていた。



あの日、帰ってからメッセージを送ったが既読にすらならず心臓が凍る思いで朝を迎えた。

次の日の夜「昨日は返信できなくてごめん」とだけ返ってきて、理由を聞きたいけどまた怒らせてしまうんじゃないかと聞けない。


そこからよそよそしいやり取りが続いていたが、春物のCMを撮り終えどれくらいかすると仕事に集中したいからしばらく連絡を取り合うのはやめたいとメッセージが届いた。

慌てて電話をかけたが出てくれず、切ると少ししてから「勝手でごめん」と浮かんだメッセージ。



北山に言われ、自分が一生一緒にいるということを正面から捉えていなかったと気付いた。


だが自分の気持ちを両親に伝えることはやはり怖く、すぐに動けない。

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