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「裕太」
するとそれまで黙っていた宏光が、顔を上げ名前を呼んだ。
「そんな風に想ってくれるの嬉しいし、正直裕太と一緒にいたら幸せになれるかなって思う自分もいる」
隣に座ると真剣な顔で口を開く。
「でも俺は藤ヶ谷が好きで、そんな俺が裕太に甘え続けるのは駄目だと思う」
わかってはいたがはっきり告げられたのは初めてで、想像以上に胸が痛んだ。
だがこの痛みに負けたら終わってしまう。
「それは俺が傍にいるのは迷惑ってこと?」
「や、それは違う! 違うけど」
「今はガヤのことが好きでもいい。俺のこと利用してるんでもいい。だけど迷惑じゃないなら傍にいさせて欲しい」
「でも」
「もし望んでくれるなら今すぐ家族になりたいし、仕事でもプライベートでも宏光を支えたい」
宏光は多分ガヤを信用しきれてない。俺ならすぐにでも望んでいるものを与えられる。
恋愛や結婚に求めるものは人によって様々で、どの選択が一番幸せかなんてわからない。
でも俺を選んでくれたら必ず幸せにすると誓える。
「そんなこと出来ないよ」
「俺を思ってくれてるなら俺の手を取って。絶対後悔しないし、させない」
宏光が後悔しないかは分からない。でも俺は絶対に後悔しない。
例え俺を選んだことを宏光が後悔しても、違う人の隣で笑っている姿を見る方が辛い。
俺のことを好きじゃなくても、一緒にいてくれるだけでいい。
その為に俺が持てるものはすべて差し出す。
自分がこんな惨めなくらい誰かに縋るなんて考えたこともなかった。
でも惨めでも何でも、今が踏み込む時だと思うから。
「……裕太……」
宏光の目と声が揺れている。
「好きだよ」
手を握ると、風呂上りだからかすごく熱かった。
目を揺らしたまま眉を下げた宏光は、その手を握り返してはくれない。
片手を伸ばし胸に抱きこんだ体が硬くなる。
「大丈夫、何も考えなくていいから」
言いながらしばらく背中を撫でていると、宏光は胸に頭を預けたまま静かに瞼を閉じた。
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くらげ(プロフ) - tenさん» tenさーん!最後までお付き合い頂き誠にありがとうございます。最初はTさんが泣いて終わる予定だったのですが後味どうなんだろう…と今回の形にしてみました。喜んでもらえて良かったです。また読み返してやってください。コメント本当にありがとうございました! (2022年11月16日 22時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - seaさん» 良かったと言って頂けて安心しました。タイトルも気に入って頂けて良かったです。今後もよろしくお願いします!(*´-`) (2022年11月16日 22時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - seaさん» seaさーん!私こそ最後まで読んで頂きありがとうございます。書いてる期間が長すぎてこれ楽しみにしてくださってる方いるのかなと思うこともあったので、そう言ってもらえてとても嬉しいです。大人になると出てくる仕事や恋愛の悩みと成長を含めて書いてみましたが→ (2022年11月16日 22時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - mimotaさん» mimotaさーん!完結までお付き合い頂き誠にありがとうございます。感動しながら読んで頂けたなんてとても嬉しいです。これから色んなことがあると思いますが二人なら乗り越えていけると思うので妄想いっぱいしてくださると嬉しいです。いつも沢山ありがとうございます! (2022年11月16日 22時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - chaizoukunさん» コメントありがとうございます!私の作品が大好きだと仰ってくださり更には過去作も何度も読んで頂いて本当に嬉しいです。お気に入り作者登録がキリの良い数字になったら番外編を書こうかなとぼんやり思っておりますがそんな日が来るのか(笑)今後も宜しくお願いします (2022年11月16日 21時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くらげ | 作成日時:2022年7月1日 0時