【薄桜鬼】～感情のない忍び～ (ページ7)

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朝食が終わった後、私は稽古に付き合わされていた。

竹刀のぶつかりあう音が道場内に響きわたる。私は、丁度永倉と手合わせしていた。

両者引かない試合となっていたが、正直いうと私は退屈していた。

(動きが鈍い。これならすぐ殺せるな)

そんなことを考えながら、私は永倉の攻撃を受ける。
ここで変に勝ってしまっては怪しまれるのがオチだ。だからここでは勝たない。そう思って試合を続けた。

結果は永倉の勝ち。

そろそろ飽きてきた私が適当に負けたのだ。もっとも、誰もそんなことには気づいていないが。

『いい汗をかいた。ありがとな、永倉』

「いやあ、こっちこそな！いい試合だったぜ！きっとAはもっと強くなるだろうよ！」

『…そうかもな』

永倉の言葉に、意味深な表情で私は頷く。そして、顔を洗いにいくため、道場を去った。

井戸の冷水を顔にかけてすっきりする。手拭いで顔を拭いて、目を開くと、目の前に男がいた。

「こんにちは！」

『お前、誰』

驚きもせずにそう言うと、目の前の男は爽やかに笑う。

「ははっ！少しくらい驚くかと思ったんだけどな！」

『これくらいで驚いてどうする』

「手厳しいなあ」

相変わらずにこにこしたまま話しかけてくる男。初対面なのに馴れ馴れしいその態度に、私は不信感を抱く。

「あ、俺、義弥って言うんだ。よろしくな！」

にかっ、と笑う姿は太陽みたいな男だった。顔も悪くなく、中々整った青少年、という感じの顔をしている。

『で、俺に何のよう？』

無表情のまま問うと、義弥は人懐っこい笑みを浮かべる。

「俺、あんたと仲良くなりたくてさ！」

『………は？』

恥じらいもなくいう義弥は、私の目に不思議に映った。

「あんたの名前は知ってるぜ！Aだろ？さっきの永倉さんとの試合見ててさ、すげえなあって思ったの。それで、友達になれたらいいな…って。駄目か？」

特に友達とかどうでもいい。

忍びの私に友達なんて必要ないから。だが、ここで突っぱねては、信用に関わる。仕事に支障が出るかもしれない。

そう思って、私は踵を返し、振り返って言った。

『勝手にしろ』

と。

すると、義弥は笑顔になり、犬のように私の後をくっついてきた。

「これからよろしくな！義弥！」

『…煩い』

義弥。

少し変わった奴。このときにはそれくらいしか思っていなかった。