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何気に、本部からの帰路を風間さんと歩くのは初めてだ。
風間「最近、調子がいいみたいだな。」
『ランク戦、見てくれてるんですか?』
風間「当たり前だろう。この間、小南と個人戦をしていたのも見た。
小南に4勝できる射手は、姫坂くらいかもしれないな。」
『いやいや、二宮さんと出水もいけますよ。』
風間さんは、私がボーダーに入った時からお世話になっている先輩だ。
当時は、辛い時でも正論をぶつけてこられたから正直嫌いだったけど、今となってはあの時の言葉が原動力になっている。
泣き虫だった私を、ここまで強くしてくれた人は、王子隊の他では風間さんと諏訪さんなんじゃないだろうか。
『それにしても、迅さんはなんで急にあんなこと言い出したんですかねぇ。』
風間「迅のことだ。何か良くない未来が見えたんだろう。」
そう言った矢先。
「ボーダーの人?」
『え?』
急に女性の声が聞こえた。
落ち着いた感じで、迷ってしまったのだろうか。でも、この辺は危険区域で、一般人は立ち入り禁止のはずなのに。
風間さんと同時に声のした方へと振り返る。
すると、ビュンッと顔の横スレスレに何かが通り過ぎた。
カランカラン、と軽快な音を立てて地面に落ちるそれは、ペーパーナイフだった。
私の頬からは、細く一筋の血が流れる。
風間「姫坂!」
『か、ざまさん、』
「大規模侵攻で、私の家族が、娘が、家庭が潰されたのに、どうして貴女は笑っていられるの!?」
風間「姫坂、換装だ。」
すでに換装を済ませている風間さん。本部への連絡ももう入れてあるのだろうな。
目の前の女性は、気が動転してしまっているようで、支離滅裂な話によると、この前のガロプラ侵攻で少しだけゲートが見えてしまったらしい。
それで、大規模侵攻の怒りが込み上げてきたのだろうか。ずっと腹の中で抱えていたのが、爆発してしまったのだろう。
私だって、できる限りのことはしたと言い返してやりたかったけど、家族を失う辛さは知っていたから何も言えなかった。
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作者名:通りすがりのいぬ | 作成日時:2022年3月7日 16時