キセキとラノベ 16 ページ19
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タチが悪かろうが、これが彼女の素である。
噂は何も、「部活動に所属していない」と言うだけではない。
とは言えど、彼女の性格やら何やらに関する噂はほぼ存在しないと言っていい。故に、誰も彼女がどんな人物かを把握していない。
とある名家の一人娘で、しかしそれを周囲には隠すよう言われているのだ、とか。
両親がおらず、小さな弟と施設育ちの為早々に帰って面倒を見ているのだ、とか。
あまりにも適当で馬鹿げた噂ばかりだが、それを本人が気にしておらず、否定しないが為に迷宮入りしているだけである。
「ところで。今は放課後ですし、緑間さんは部活がありますよね?」
「読書も必要な事なのだよ。赤司には遅れると伝えてあるが」
「例えそうでもこんなところに閉じこもっていては行くものも行けませんよ」
正論だった。
「……出る方法を知っていると、言っていたな。ならさっさとここから出すのだよ」
「人に物を頼む時って、どんな態度をすべきかお忘れになってます?あなた何歳ですか?」
唇をかみ締めた緑間は、それから悔しそうに吐き出した。
「この扉を……開けて欲しいのだよ!」
「及第点ですね。すみませんが少し避けていただけますか?」
「何、」
「扉、開けるので。少し避けてください」
まさか蹴破る気か、と身構えた緑間の心情など知らず、彼女はカチャン、と扉の鍵を開けた。
「教室の扉は内側から簡単に開けることが出来る……と言う、常識をお忘れなんですね。あなたのような方のそういう場面を見ていると、何だかとても面白くて。しばらくは見てられたのですが、私もそろそろ帰りたかったので」
さらりさらりと彼女の口から零れた言葉に、緑間は一瞬ポカン、とした後に、じわじわとその顔を赤くした。
「……、わ、すれていたのだよ……っ!」
「そういう事にしておいてあげます」
「弱みを握られたくらいでは痛くもないのだよ!」
「別にバラすつもりはありませんよ。こんなお笑いネタ、人に話す暇あったら一人でバカにして笑ってます」
「……やはり最悪なのだよ」
でも、と続けようとして、緑間はやめた。
その言葉の続きは蛇足だと、確信したから。
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西谷彩香(プロフ) - おは朝信者ならぬ虹村信者さん» コメントありがとうございます!この物語に出てくるラノベはあくまで私考案のオリジナルのものなので、架空のものになります! (2017年6月14日 20時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
おは朝信者ならぬ虹村信者 - ラノベってうってんのかな? (2017年6月14日 19時) (レス) id: c944dad363 (このIDを非表示/違反報告)
西谷彩香(プロフ) - 鳴神花音さん» はい、多分次世代でも波乱を起こすのはお決まり、赤司家かと思われます。次世代主人公の彼女も、今後ともよろしくお願いします! (2017年5月15日 3時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
鳴神花音(プロフ) - 西谷彩香さん» テンションの高いあの人の子供でもあるらしいですからね。キセキとの絡みも楽しみにしています。赤司とか。 (2017年5月14日 21時) (レス) id: 7a206e086e (このIDを非表示/違反報告)
西谷彩香(プロフ) - 鳴神花音さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!淡々と返す主人公は娘にあまり受け継がれはしませんが…主人公のそれをかのれからも生かして行けるように頑張ります!ありがとうございました! (2017年5月14日 20時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西谷彩香 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時:2015年10月11日 22時