僕はただ、37 ページ38
*
……だが、そんな言葉はひとつもなかった。
「お疲れ様、征ちゃん」
「惜しかったけど、俺、超楽しかった!」
「木吉に負けたのは悔しいけどな」
実渕も、葉山も、根武谷も、笑っていた。
それから。
「……ま、途中良いザマも見れたし、何だかんだ高校生活の最後に良い思い出を貰った」
黛さんまでもが、そう言った。
負けたのに。俺のせいで、俺の力不足で。誠凛は倒せず、絶対王者の洛山と言う看板に傷を付けたと言うのに。
「……怒らないのか」
その言葉に、葉山がいち早く反応する。
「何で?」
「俺は……散々、お前達に」
「別に何も怒ってないし、他はどうかは知らないけど、俺は楽しかったから良いよ!それに、赤司は年下なのにずっと洛山のために頑張ってくれてたし?」
「そうね。私たち、ずっと征ちゃんに任せっきりだったもの。むしろ、良くここまで頑張ってくれたわって褒めたいくらいよ」
「……私、ずっとトオのこと苦手で、ずっと早く離れたいって思ってたけど……でも、分かったの。トオはちゃんと、優しい人だって。最後には私にも逃げ道作って、私がいつでも離れられるようにしてくれてたし……姉さんのことも、やり方が酷かっただけで、好きでい続けてくれてたし」
「お前の作ったメニューはキツかったけど、木吉とあそこまで張れたのはお前のおかげだ」
「高校最後の年に俺に夢を見させたのは、お前だろ。お前を責める理由は無い」
その言葉たちを聞いて、俺は俯く。
やめてくれ。
俺は、俺は敵だったんだ。誰にとってもの敵であり続けたはずだったんだ。
それは、お前達にとってもそうだったはずだ。
何なら、怒って俺を殴ってくれた方が、良かったのに。
「……どうしてくれるんだ」
「は?感謝してやってるのに……」
俺の言葉に反論の声を上げかけた黛さんのその声を遮って、俯いていた顔を上げて告げる。
「格好が、つかないだろう……さっき、止めたばかりだと言うのに」
零れた涙は、もう止まらなくなってしまった。
後から後から溢れる涙を拭って、拭って、俺は言う。
「こんな……こんな俺に、付いてきてくれてありがとう、お前達……」
その日俺は敗北と同時に、もう一度仲間を手に入れたのだった。
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西谷彩香(プロフ) - QOOさん» コメントありがとうございます。原作のストーリー沿いだったこともあり、全くと言って良いほど描かれなかった赤司様視点で書くのはなかなかに難しかったですが、そう言っていただけで光栄です!ありがとうございました。 (2018年3月29日 9時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
QOO - やっぱり誠凛VS洛山の試合は感動ものですよね・・・思わず泣いてしまいました。征君が夢主ちゃんに惚れたのもわかるような気がします。とても面白かったです!!これからも頑張ってください!! (2018年3月29日 8時) (レス) id: 5adcb33c47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西谷彩香 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時:2018年2月9日 19時