僕はただ、36 ページ37
*
そこからはコンマ数秒の出来事だった。
誠凛のSGが放ったボールはゴールを外し、根武谷がC勝負で押し負け、そのボールは弾かれて、黒子の手へと渡る。
撃たせない。勝たせない。勝たせるわけにはいかない。
これは俺の、洛山の、帝王の意地なんだ。
「終わりだ!!黒子!!」
だが、黒子の目にはまだ、光が。
「……いいえ、まだです」
その声を聞いて俺はハッとする。
ダメだ、黒子に釣られては。
それは俺が、黒子に。あの頃からずっと、黒子は＿＿＿
「僕は影だ」
その言葉と共に、黒子の手からボールが放たれる。
シュートではない、絶対的光＿＿＿火神へのパスが。
火神の手に収まったボールは、その雄叫びと共にゴールへと叩きこまれ、そして、ブザービートが鳴り響いた。
初めての敗北。形容し難い痛み。
……整列まで平静を保つなど出来ないほどの悔しさ。
……嗚呼、これが、敗北か。
それでも、だからこそ、思う。
バスケを続けていてよかったと、仲間に出会えて良かったと。
そんな思いを抱えながら、コートに立つ黒子へと近づく。
これは何の涙だろうか。もう、分からないことだらけだが、それでも。
涙を目に浮かべたまま、黒子に手を差し出した。
「お前の……いや、お前達の勝ちだ。おめでとう」
俺の差し出した手を握った黒子に、俺は続けた。
「……そして覚悟しておけ、次こそ勝つのは
俺がまた仲間と戦うことを選んだと、分かったのだろう。
目を見開いた黒子は、それから嬉しそうに目を細め、俺と同じようにその目に涙を浮かべた。
「……はい、またやりましょう。次も、その次も、何度でも＿＿＿＿」
そうして、WCは新進気鋭の東京代表、誠凛高校の優勝で幕を閉じた。
＊
控え室に戻れば、皆が皆俺を見た。
……あれだけ大口を叩き続け、一度は彼らを見限った。そんな俺に付いてきてくれた彼らには感謝しかないが、彼らは俺に不平不満だらけだろう。
どんな言葉も甘んじて受け入れようと、そう思った。
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西谷彩香(プロフ) - QOOさん» コメントありがとうございます。原作のストーリー沿いだったこともあり、全くと言って良いほど描かれなかった赤司様視点で書くのはなかなかに難しかったですが、そう言っていただけで光栄です！ありがとうございました。 (2018年3月29日 9時) (
レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
QOO - やっぱり誠凛VS洛山の試合は感動ものですよね・・・思わず泣いてしまいました。征君が夢主ちゃんに惚れたのもわかるような気がします。とても面白かったです！！これからも頑張ってください！！ (2018年3月29日 8時) (レス) id: 5adcb33c47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：西谷彩香 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時：2018年2月9日 19時
