僕はただ、3 ページ4
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「……ただの興味本意だ、深い意味は無いよ。君があの三月家の人間なのは予想はついていたけどね。まぁ、だからと言ってどうすると言う訳でもないが」
「……何だ、そうだったんだね!ごめんごめん、なかなかこんな聞いてくる人いないから、びっくりしちゃったよ!」
彼女はそう言ってぱっとその笑顔を更に深め、「まぁでも、よろしくね!赤司くん!」と言う。
差し出されるは、彼女の右手。
しかしその手を取ることはせず、違う質問を投げる。彼女はもう話が終わったと思っただろうが、終わっているはずがない。
「逃げたいとは思わないのか?あれだけの噂だ、耳にも入っていて、実際の被害だってあるんじゃないのか」
僕には関係ないし、言ってしまえばどうでもいいが、三月神奈を手放すのは惜しい。
たったそれだけのために。
「えっと。……だから、赤司くんには関係ないよね?」
「ないな」
「……何で、そんな事聞くの?」
「興味本位だと言っただろう。……まぁ、関係はないが、逃げたいなら力にはなってやれるが」
僕の言葉に、彼女は曖昧な表情になる。
「どうして……今日会ったばっかりの私に、そんな事を?」
理由なんてものは無い。特別な思い入れも当然、ない。あるはずがない。それでも、無理に理由をつけるなら。
「……強いて言うなら、似ていたからだよ」
「似てた?」
「あぁ。似ているよ、良く似ている」
「……誰に?」
「さあね」
「……分かんないな」
「分からなくていいよ。……それで、もし逃げられるなら、どうする?」
先程の話を持ち出せば、彼女は少し考えるような素振りを見せた後、初めてその笑顔を崩した。
何かを乞うような、そんな表情を浮かべた。
「逃げられるなら、……とっくに逃げてる」
その言葉に、偽りはなさそうだった。
「へぇ。……名家の人間と言う自覚がないんだね、君には」
「好きであの家に生まれたわけじゃない。それに……本当なら私今、此処にいるはずがなかったんだから」
泣きそうな顔になりながら、三月は胸元のロケット型のペンダントを握りしめた。
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西谷彩香(プロフ) - QOOさん» コメントありがとうございます。原作のストーリー沿いだったこともあり、全くと言って良いほど描かれなかった赤司様視点で書くのはなかなかに難しかったですが、そう言っていただけで光栄です!ありがとうございました。 (2018年3月29日 9時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
QOO - やっぱり誠凛VS洛山の試合は感動ものですよね・・・思わず泣いてしまいました。征君が夢主ちゃんに惚れたのもわかるような気がします。とても面白かったです!!これからも頑張ってください!! (2018年3月29日 8時) (レス) id: 5adcb33c47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西谷彩香 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時:2018年2月9日 19時