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僕はただ、29 ページ30

*








神奈は、この試合が始まる前に彼女に会っている。

手を噛まれ、堂々たる宣言をされたものの、僕はもう神奈はどうでもいい。この際、神奈を縛り付けておく理由はない。


神奈がソワソワしているのも、彼女に会いたいと言うのもあるのだろう。

だがどうだろうか。普段、この会場内で神奈がその瞳に映すのは姉である彼女のはずが、今は恐らくは彼女ではない。

むしろ、その隣の___テツヤだ。


何を考えているのかは分からないが、これ以上、僕が首を突っ込むようなことでもないだろう。


それが凶と出るか吉と出るかは、決勝まで行けばきっと分かる。











準決勝の会場は、すっかり盛り上がっていた。

涼太が灰崎を破り、もう一つの準決勝は誠凛対海常。そして、この会場……洛山対秀徳の試合開始から、ズレてスタートするらしい。

と言うのも、当然予定は把握していたのだが。


先程誠凛の女監督のそばに居た神奈は、僕の方へと戻り俯いたまま一言も発することなく後ろを歩く神奈を見れば、そろそろ潮時だろうと分かる。

僕といること自体、神奈にとっては多大なるストレスだろうから。

将来、「こんなこともあったな」と笑い飛ばせる時が来てくれれば良いのだが。その時は"俺"に任せよう。僕には出来ないことだ。


もうすぐこちらの試合開始時間が近づき、会場に入れば、当然の如く体育館が揺れる位の歓声が飛び交う。

既に、秀徳は準備に取り掛かっていたようだ。


それから真太郎の姿を見つけ、僕は歩み寄った。



「真太郎」


「……赤司」


「一応、言っておこうかと思ってね」


「……何を、言うつもりなのだよ」


「お前に、二度目の敗北を与えよう。僕にはそれが出来る」


「……何だ、そんな事か。それならば俺だって、赤司、お前に一応言っておくのだよ」


「へぇ、何を?」


「俺のシュートは落ちん。だからこそ俺は負けん」


「ふぅん……。まぁ、そう言っていられるのも今だけだよ、真太郎」



僕はそれだけを言って、今度は「高尾」の元に向かった。



「君が、高尾和成……だね?君の話は聞いているよ、鷹の目(ホークアイ)を持つPGが秀徳にいる、とね」



その一言だけで、高尾の顔が、その場の空気全てが凍りつくように固まった。






*

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西谷彩香(プロフ) - QOOさん» コメントありがとうございます。原作のストーリー沿いだったこともあり、全くと言って良いほど描かれなかった赤司様視点で書くのはなかなかに難しかったですが、そう言っていただけで光栄です!ありがとうございました。 (2018年3月29日 9時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
QOO - やっぱり誠凛VS洛山の試合は感動ものですよね・・・思わず泣いてしまいました。征君が夢主ちゃんに惚れたのもわかるような気がします。とても面白かったです!!これからも頑張ってください!! (2018年3月29日 8時) (レス) id: 5adcb33c47 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:西谷彩香 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/  
作成日時:2018年2月9日 19時

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