僕はただ、26 ページ27
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ホテルに戻ってからも、ここ数日の試合も、気づけば僕は唇に手を当てていた。
完全に無意識で、玲央に言われて初めて気がついたのがついさっきだ。
「……印象、強いな」
流石に、僕の記憶にも焼き付いた。
どんなに嫌われようと、それでも……彼女は。
彼女は、とても優しい人だから。
きっと、"俺"を許してしまう。
きっと、"僕"を肯定してしまう。
あの時彼女に惹かれたのは俺で、あの時彼女を追い詰めたのは僕だ。
そして今、彼女が見ていたのは"僕"だ。
今頃、テツヤ当たりにはバレただろうか?
……いや、彼女の事だ、誰に言わずにいることだろう。将来、この事実を知る者は現れるのだろうか。
そんなくだらない未来を想像しつつ、残す試合は後どんなに多くても三回……所謂準々決勝にまで進んでいた。
僕が驚いたのは、テツヤが一回戦から大輝を破った事。それは少し想定外だった。東京予選では負けたと聞いていたから、もしかしたら程度には考えてはいたのだが。
その後も敦を破り、誠凛も準決勝に進んでいた。
「……予想通りと言えば、まぁそうだろう」
優勝を争うのは、誠凛、海常、秀徳、そして洛山だろう。
涼太はずっと注目していた。アイツは必ず化けると確信していたからだ。涼太と大輝が戦った時には涼太の枷は外れていたのをぼんやりと思い出し、この先厄介な相手になるだろうと考えた。
そんな思考を巡らせながら神奈が纏めたノートに目を通す。
「……的確だね。真太郎も、涼太も、そしてテツヤも……。いや、火神……アイツも警戒するべきか」
残念だが、洛山がこんな所で負けるはずがない。このまま勝って僕と当たる真太郎には、二度目の敗北を味わってもらうとしようか。
……そう言えば、この数日会場で見かけていたあの高尾とか言う男、彼女の何なんだろうか?
まさか、僕のあれがきっかけで心を決めた、なんて事があるのだろうか?
最近はテツヤよりも距離が近いように見えていたし、可能性はある。
それに関しては、向かい合えば分かることだ。
彼女を苦しめたい訳ではなく、単純に彼女の瞳に映っていたいだけに行うのだから、タチが悪いと言うのは自覚済みだが。
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西谷彩香(プロフ) - QOOさん» コメントありがとうございます。原作のストーリー沿いだったこともあり、全くと言って良いほど描かれなかった赤司様視点で書くのはなかなかに難しかったですが、そう言っていただけで光栄です!ありがとうございました。 (2018年3月29日 9時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
QOO - やっぱり誠凛VS洛山の試合は感動ものですよね・・・思わず泣いてしまいました。征君が夢主ちゃんに惚れたのもわかるような気がします。とても面白かったです!!これからも頑張ってください!! (2018年3月29日 8時) (レス) id: 5adcb33c47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西谷彩香 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時:2018年2月9日 19時