僕はただ、21 ページ22
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神奈は、しばらく惚けた顔で一点を見つめ、それから口角を少しだけ上げて笑った。
「……姉さん、みーつけた」
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嫌な予感がする。
あの神奈が頭を使ったとしても、この広い会場内で彼女に会える可能性はゼロに近いと言うのに、何をこんなに心配しているのだろうか。
全力を出すまでもない相手をそこそこの力で抑えつつ、翻弄し続ける。
「玲央」
「あら、何かしら征ちゃん」
「……僕は、間違っていると思うかい?」
「内容によるけど……」
「……今、この試合の間、神奈を会場に解き放ったことを」
「征ちゃん的には間違いだったかもしれないわね。あの子達は双子だし、勝手に引かれ合うものじゃない。今頃会ってても可笑しくないわよ。……そんなに気になるなら、試合に集中したらすぐに終わるわよ」
玲央はふぅ、とため息をついて回ってきたボールをまたスリーポイントで決める。
それ程の余裕がある、と相手に分からせている訳ではない。
純粋に、その余裕があったから話してしまっただけなのだ。赤司に悪気はない。
だとしても、対戦校は既にもう、諦めてしまっていた。
*
試合が終わり控え室に戻ってくると、中に既に神奈がいた。
「……神奈」
「あ、神奈ちゃん!俺ら勝ったよー、楽勝だった!」
またすぐに神奈に絡み始める小太郎は、かなり神奈を気に入っていると言って良い。
何がそんなに良いのかは、僕にはさっぱりだが。
「あ、おめでとうコタくん!でも悪いんだけど、ちょっと静かにして?今、纏めてるとこだから……」
確かに言葉通り、神奈の手には紙の束とこれでもかと分厚いノート、それからペンがあった。
「……何処まで纏めた」
「何処までって、やれるとこまで」
平然とそう答えた神奈の手からそのノートを受け取り中をパラパラと見て、僕は少し驚いた。
「……いつから、調べていたんだ」
「分かるとこは京都にいる頃から情報集めて何とか纏めてたけど、今さっき纏めてたのは東京周辺の三校くらい……」
神奈は、優秀だった。
どれだけ僕より劣っていようが、神奈は確かに天才と呼ぶべき才能を持っていたのだ。
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西谷彩香(プロフ) - QOOさん» コメントありがとうございます。原作のストーリー沿いだったこともあり、全くと言って良いほど描かれなかった赤司様視点で書くのはなかなかに難しかったですが、そう言っていただけで光栄です!ありがとうございました。 (2018年3月29日 9時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
QOO - やっぱり誠凛VS洛山の試合は感動ものですよね・・・思わず泣いてしまいました。征君が夢主ちゃんに惚れたのもわかるような気がします。とても面白かったです!!これからも頑張ってください!! (2018年3月29日 8時) (レス) id: 5adcb33c47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西谷彩香 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時:2018年2月9日 19時