僕はただ、2 ページ3
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三月を名乗った彼女は、あの三月家の人間なのだろうか。
それこそ、噂には聞いている。悪どいことに手を染めているだとか、跡取りの一人息子と孫を縛り付けているだとか。
どうであれ、それが事実だとするならば。
そも、三月家は京都の名家の一つ。此処に居ても、何ら不思議はない。
だから僕は、カマをかけてみることにした。
放課後、まだ席に座り、胸元のロケット型のペンダントをいじる彼女に近づき、僕は出来るだけ柔和な笑みを浮かべた。
「やぁ、初めまして」
「それって私に言ってる?赤司征十郎くん」
「あぁ」
「席も離れてるのに、ご苦労様だね!私に何か用かな」
「何も無かったら僕だってわざわざ話しかけないよ。……この後は空いてるかな」
「まぁ、少しなら空いてるよ?でも、三時までに帰らないと怒られるから、早めにどうぞ!」
彼女はそう言ってへらりと笑うと、荷物を鞄にしまいこんで、僕を見上げた。
僕らそれに応えて自分の席に戻り荷物を持ち、彼女に視線を投げた。
彼女はそれに応えるように頷いて立ち上がり、僕のあとを追うようについて来た。
訪れたのは、屋上。
放課後ということもあってか、見える範囲には誰もいなかった。
フェンスの近くまで寄って、僕は振り返る。
教室にいた時のように、優しげな笑みを浮かべた彼女がいた。
その笑顔を、何故か崩してみたくなった。
恐らくは、気丈で、自分を晒さない
「少し、気になってね。君、隠す気がないのか何なのか」
「……何が言いたいのか分からないかな」
「最近、あまり良くない噂を聞いてね。京都にいれば、いくら凡人でも聞くだろう。三月家のことを」
「まぁ聞くけど……どうかした?三月家の噂なんて今に始まったことじゃな、」
「クラスメイトもあの様子だったし、その噂の三月家のお孫さんかと思ってね」
「……だとしたら、何かな。赤司家の君に、何の関係が?」
僕の言葉に、彼女は笑顔を保ったまま、声のトーンを落として静かな問いかけを僕に投げた。
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西谷彩香(プロフ) - QOOさん» コメントありがとうございます。原作のストーリー沿いだったこともあり、全くと言って良いほど描かれなかった赤司様視点で書くのはなかなかに難しかったですが、そう言っていただけで光栄です!ありがとうございました。 (2018年3月29日 9時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
QOO - やっぱり誠凛VS洛山の試合は感動ものですよね・・・思わず泣いてしまいました。征君が夢主ちゃんに惚れたのもわかるような気がします。とても面白かったです!!これからも頑張ってください!! (2018年3月29日 8時) (レス) id: 5adcb33c47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西谷彩香 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時:2018年2月9日 19時