僕はただ、17 ページ18
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「……真太郎、そのハサミ、少し借りてもいいかな」
「構わないが……何に使うのだよ?」
「前髪が鬱陶しくてね。……でも、その前に……火神くん、だよね?」
階段を降り終え、手にしたハサミを一気に火神に突き出した。
彼は間一髪でハサミを避けたものの、少し頬を掠ったようだ。
「……へぇ。今の身のこなしに免じて今回は許すよ。ただし次はない。僕の命令は絶対だ、僕が帰れと言ったら帰れ」
そう言ってから、ゆっくりと戻りながら前髪に刃を入れる。
「この世は勝利が全てだ。勝者は全て肯定され、敗者は全て否定される。そして僕は勝者であり、それはこれからも変わらない」
シャキン、シャキン、と刃の通る音がよく響いた。
「全てに勝つ僕は全て正しい。僕に逆らう奴は親でも殺す」
階段の途中の真太郎にハサミを返し、それから上段まで上がって振り返る。
「……さて、今日はこれだけだ。今度は次会うときは……皆、敵だ」
そう言ってふっと笑って見せれば、大輝が声を上げる。
「ハァ!?おい赤司!まさか挨拶のためだけに俺たちを集めたわけじゃねーだろ!?」
「あぁ、あの時のことを確認しようと思ったが……お前達の目を見て、その必要は無いと確信した」
その言葉に、全員の空気が一瞬で変わる。
「……と言うわけで、話は終わりだ。A、僕について来てくれるね?」
「……疑問符つけるだけ無駄でしょう、どうせ決定事項だとか何だとか言って、はなから私をこのまま帰す気なんてなかったでしょうに」
彼女はそう言ってため息をついた後、僕に続いて階段を登り始める。
「Aさん……っ!」
後ろから泣きそうな声でテツヤが彼女を呼ぶ。彼女はゆっくりと振り返ってから、テツヤに告げた。
「……テツヤさん、私は大丈夫です。少し遅れるって、リコさんに伝えてもらえますか?」
彼女はそう言ってから、僕に向き合って「……リコさんが心配するので早急にお願いします」と早口に告げた。
僕はくすりと笑ってそれを了承した。
「さぁ、行こうか」
彼女の返事は聞こえなかったが、大人しく後ろをついてきている所を見ると、変な所で彼女は真面目で、ひどく律儀な人間だと思う他ない。
僕としては好都合ではあるが、この状況ではただの間抜けもいいところだが。
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西谷彩香(プロフ) - QOOさん» コメントありがとうございます。原作のストーリー沿いだったこともあり、全くと言って良いほど描かれなかった赤司様視点で書くのはなかなかに難しかったですが、そう言っていただけで光栄です!ありがとうございました。 (2018年3月29日 9時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
QOO - やっぱり誠凛VS洛山の試合は感動ものですよね・・・思わず泣いてしまいました。征君が夢主ちゃんに惚れたのもわかるような気がします。とても面白かったです!!これからも頑張ってください!! (2018年3月29日 8時) (レス) id: 5adcb33c47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西谷彩香 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時:2018年2月9日 19時