僕はただ、16 ページ17
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再会は、呆気ないものだった。
キセキの世代と彼女に宛てた一斉送信のメール。全員に集まるように呼びかけた内容の最後には、彼女の名前が踊っていた。
『WCの幕開けに際して、お前達と会っておこうと思ってね。開会式終了後、エントランス前の階段に集まってくれ。当然、送ったからお前もだよ。Aは来なさそうだから特に、ね?』
返信は、1つも来やしない。
当然だ。僕の命令こそが絶対で、それは今でも変わりない。
ぼんやりと携帯の画面を眺め、それからポケットに仕舞い、エントランス前の階段へと向かう。
「って言うか、呼んだ本人がラストってどーなんスか!?」
「いちいち騒ぐな、あいつはそう言う奴なのだよ」
「まぁ、黄瀬さんの気持ちはわかりますけどね。私だってあんな名指しで呼ばれたんですし」
「……ったく」
ぐちぐちと良くもまぁ、すぐにでも現れたっておかしくない相手のことを言えたものだ。まぁ、大方僕に対して悪態をついたのは彼女なのだが。
「……すまない、待たせたね」
そうして階段の一番上で、かつての仲間を見下ろした。
「……赤司くん」
「あ、赤司っ……!?」
逆光で僕の顔が見えないのか、眩しそうに目を細める見覚えのない顔。
「久しぶりだね。こうしてまた会えて嬉しいよ。……だが、一人、この場に似つかわしくない人がいるようだ。僕が会いたいのはかつての仲間だけだ。悪いが、君は帰ってくれるかな」
足が竦んで動けないのか、彼はカタカタと微かに震えるだけで動き出す様子はない。
何なら動かしてやろうかと近づきかけ、彼女から毒牙が飛ぶ。
「私、かつての仲間じゃないですけどね。キセキの世代に話がしたかったなら、私はいらなかったと思いますけど」
「まぁ、そうだが。僕が個人的に話があっただけだ」
くす、と笑ってから、僕はまた歩を進めようとする。なるべく、彼女から距離を取るように敢えて離れて歩こうと。
その時だった。
「仲間外れにすんなよ。……あんたが赤司か」
「かっ、火神!?」
「おう、ただいま。で、話はアトで……会いたかったぜ、赤司」
不敵に笑った火神と呼ばれたそいつの存在が、一瞬だけ、"俺"の意識を浮上させた。
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西谷彩香(プロフ) - QOOさん» コメントありがとうございます。原作のストーリー沿いだったこともあり、全くと言って良いほど描かれなかった赤司様視点で書くのはなかなかに難しかったですが、そう言っていただけで光栄です!ありがとうございました。 (2018年3月29日 9時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
QOO - やっぱり誠凛VS洛山の試合は感動ものですよね・・・思わず泣いてしまいました。征君が夢主ちゃんに惚れたのもわかるような気がします。とても面白かったです!!これからも頑張ってください!! (2018年3月29日 8時) (レス) id: 5adcb33c47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西谷彩香 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時:2018年2月9日 19時