僕はただ、13 ページ14
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あまりにも愉快で笑った。
知っている。知っているんだ。僕は、人の心を
理解などなくても、分からなくても、人の心なんて
僕が生涯をかけて理解りたいのは、彼女の心だけだ。
そして案の定、僕の宣言通り体育館の扉は乱雑に開け放たれた。
「赤司くん!」
学校では「トオ」と呼ばないと、神奈が言った。誤解を招くから、なんて。
しかし、赤司くんと呼んでいても意味などなかったようだ。その件については、後で笑ってやろう。
「あ、赤司くん、その、あの……ご、めん、なさ……っ」
言葉ではそう言いながら、その表情は「こんなんでいい?」と言わんばかりのそれだった。
「……何のことかな、三月さん」
「私が赤司くんのそばにいるせいで、変な噂を……ごめんなさい、ほんとに、私は……」
扉の影で、誰かが動いたのが見えた。
あぁ、僕の想像通り。本当に神奈を嵌めて嘲笑してやりたかったんだと分かった。
あまりにも見え透いた、馬鹿でも出来るそんな手法を使って。
「ふふ、本当に面白いな。僕のことなんて嫌いなくせに、こういう時は簡単に頭を下げるんだね。
僕の言葉に、やっと神奈が面倒くさそうに起き上がる。
「えっと。流石理解が早いよね。負けてられないなぁ……姉さんを守るには、もっと知識をつけないと」
神奈はそう言ってため息をつくと、そのまま胸ポケットからメモ帳を取り出して何かを書き始めた。
僕は僕でもう1度ため息をつく。
「……勝手にやってくれるのは構わないが、練習の邪魔はしないでくれ。それと……望んだものは見れただろう?直ちに引き下がれ、目障りだ」
扉の方に向けてそう言い放つ。
影は少しだけビクリと動き、それからバタバタ、と騒がしい足音が響いて消えていった。
それから神奈に目を向け、宣言通り僕は笑った。
「神奈、僕を赤司と呼んでいても意味はなかったね?さぞかし残念なことだろう」
恩人じゃなきゃ殴ってるのに、何て呟いた三月を睨みつけて黙らせたのは言うまでもない。
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西谷彩香(プロフ) - QOOさん» コメントありがとうございます。原作のストーリー沿いだったこともあり、全くと言って良いほど描かれなかった赤司様視点で書くのはなかなかに難しかったですが、そう言っていただけで光栄です!ありがとうございました。 (2018年3月29日 9時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
QOO - やっぱり誠凛VS洛山の試合は感動ものですよね・・・思わず泣いてしまいました。征君が夢主ちゃんに惚れたのもわかるような気がします。とても面白かったです!!これからも頑張ってください!! (2018年3月29日 8時) (レス) id: 5adcb33c47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西谷彩香 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時:2018年2月9日 19時