桜の木 ページ7
．
あれから3日経った。
リオナはまだ目を覚ましていない。
“二代目！リクオ様から聞きました。
賊に刺されたと……。二代目、傷の方は？”
“俺の事はどうでもいい！リオナを！
鴆を呼んでくれ！”
あれからリオナは高熱を出している。
リクオは無傷、俺の傷もすっかり塞がった。
なのにリオナだけが…
「すまねえなあリオナ。
俺ァ父親なのに、お前さんに助けられちまった。
出来るのなら代わってやりてえよ」
その高熱から。羽衣狐の呪縛から。
「ダメですよ！そんな弱気になっちゃ
こんな時だからこそ、元気でいなくっちゃ！」
「そうだな、若菜……」
こういう時、若菜の言葉程しみるものはない
「リオナはどうだ。鯉伴」
「どうもこうも…
たった数分で変わるわけねえだろ親父」
親父が入ってきた。
俺達は付きっきりで看病し、
親父は何分か置きに懲りずに部屋を出入りする。
……若菜の言葉が聞いてきたのか、
何だかとても滑稽に思えてきた
家の中を一周しては様子を確認する親父も、
天井裏や親父の襖を開けるほんの僅かな瞬間を除いて
リオナを心配する奴らも……
俺は何だか笑ってしまった
「お前ぇらよ、そんな忙しなくしてると
リオナも送るに起きられなくなっちまうぜ？」
そう言うと、皆照れ臭そうに笑った。
その夜、俺は一人縁側に座り込んでいた。
別にリオナのことを
過剰に心配しているわけじゃねえ。
ただ、あまりにも静かな夜だったから
トットットットッと、足音が聞こえる。
リクオだった
「お父さん！」
「どうした？リクオ」
「お姉ちゃんのこと心配なの？」
「まあ、そりゃあな」
「お姉ちゃんなら大丈夫だよ！
明日起きるって言ってたよから！」
「……どういうことだ？」
あまりにも屈託のない笑顔で言うものだから、
反応が遅れてしまった
「誰からそんなこと聞いた」
医者もいつ目覚めるかわからないと言った。
組の中にも、
そんな無責任なことを言う奴はいないはずだ。
俺はリクオに聞いた
「誰って、お姉ちゃんだよ！」
「お姉ちゃん？リオナのことか？」
「うん！」
意味がわからなかった。
「リオナが起きたのか？」
「お姉ちゃんはまだ寝てるよ」
「…どういうことだ？」
「あっほら！お姉ちゃんいるじゃん！」
そう言ってリクオが指差した先には
「桜……」
枝垂れ桜が風に揺れているだけだった。
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作者名：kumakarin0110 | 作成日時：2020年7月7日 22時
