狐の呪い ページ6
.
俺は刺された。乙女によく似た娘に……
これは罰なのかもしれねえ。
乙女を忘れ、のうのうと幸せでいた罰。
薄れゆく意識の中、生暖かい自分の血を感じながら
そう思い、乙女に詫びた。
「お父さん!!」
リオナの声がしたかと思うと、
傷口がじんわりと暖かくなった。
そこで俺は、リオナが自分を治しているのだと気づく
すまねえ乙女。
リクオだけは、リオナだけは守らせてくれ。
「お主、珱姫か?
…いや、珱姫が生きていたのは400年も前のこと。
嗚呼、あやつの孫娘か。
その力といい容姿といい
まるで生写しのようじゃのう」
珱姫、おふくろを知ってるのか?
まずい。
400年前のおふくろをよく知っている奴なんて
ただモンじゃねえ。
俺は最後の力を振り絞ってリオナに叫んだ
「逃げろっ…リオナ!リクオを連れて!!」
「嫌!嫌!絶対逃げない!!」
リオナは泣きながらそう答える。
止めてくれ。
今のお前じゃ、この傷は治せない。
……そう思っていた。
「リオナ?」
ある時を境に、リオナの治癒能力が一気に強まった。
腹の傷はたちまち塞がった。
しかしそれと同時にリオナは気絶し
俺に覆いかぶさるように倒れる
「ほう…その年であの傷を治すのはのう。
ちょうどいい。400年前喰いそびれた生き肝。
今ここで喰ろうてやる」
そう言い娘はリオナの口に自分の口を近づける。
俺はそれをすんでで阻止した。
目を瞑って動かないリオナを片腕に抱え、
もう片方で祢々切丸を構える。
「奴良鯉伴…貴様は邪魔じゃのう。鏖地蔵。」
「はいぃ。
その言葉に俺は耳を疑った。
羽衣狐。親父が倒したとされる京妖怪の主。
鏖地蔵と呼ばれるソイツが羽衣狐に手渡したのは
俺を貫いたあの刀。
こいつは、俺とやる気だ。
そう思い覚悟した瞬間
「二代目!二代目どこですか!」
「黒か!」
「皆の者!二代目がいたぞ!」
黒田坊や青田坊、首無などが駆けつけてきた
「多勢に無勢です。ここはひきましょう羽衣狐様」
「そうじゃのう。目的は達成されたことだしのう。
それに…」
そう言いかけ、羽衣狐はリオナを見た
「其奴はまだ子供。喰える生き肝も少なかろうて。
十分に成長してから今度こそ喰らうとしよう」
そう言い二人は闇に消えていった
7人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:kumakarin0110 | 作成日時:2020年7月7日 22時