邦楽ロックの短いおはなし

ある日の夜【田淵智也】 ページ20

『もしもし』









彼女の少し疲れた声。








ハスキーな声の彼女。









年上の彼女と離れてから約1年。






もうそろそろ会いたい、という衝動が抑えきれなくなりそうで。









でも、そんな気持ち、自分より大人な彼女にはちゃんと伝わっていない。









「最近、仕事どう？」






『どうって…普通に楽しくやってるよ』






「…そっか」









カタカタ








電話越しに聴こえる、パソコンのキーボードの音。









「あのさ、A…」






『待って、』






「待てない」






『智也、わがままは嫌われちゃうわよ』









俺はわがままかもしれない。









でも彼女との関係が終わってしまうようで。








会えない時間が長くなるほどそれを物語っているようで。









「A、外みて」






『え？なんで？』






「いいから」









とりあえず気持ちだけは伝えておく。









*









*









*









*









「月が、綺麗ですね」







鈍感な彼女に分かるかは分からないが、








『どういうこと？？』









これからもずっと＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿









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