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【19-2】 ページ39

恐らく陽花ちゃんは、天月くんが来ることを大層楽しみにしているだろうし。隣に友人が居ればがっかりするだろう。

そう考えた僕は、陽花ちゃんの迎えに行った天月くんをタクシーで待つ事にした。

運転手のおじさんと二人っきり、なんとなく気まずい時間を過ごす。

やがて陽花ちゃん連れ、早足で戻ってきた天月くん。
その表情は何処か焦っているようだった。


「陽花ちゃん乗って」

「え、うん……」

「タクシー代渡しておくから。一応今日は真っ直ぐ帰ってね」


慌ただしく彼女をタクシーに乗せた天月くんは、自分の財布から数枚のお札を出し、陽花ちゃんに渡す。


「なんかあったの?」


どことなく不穏な空気を感じ取った僕は、天月くんに尋ねた。


「ちょっとAの様子がおかしくて、心配だから追いかけてくる」


彼はそう吐き捨て後、(きびす)を返して来た道を駆け出す。


「どういう事!?」


そう尋ねた僕の声は、彼に届かなかったようで
思わずその背中を呆然と見つめた。


「陽花のせいじゃない……」


隣から聞こえたその小さなの声でハッと我に返った僕。


「何があったの?」

「別に、何もないです」


天月くんといる時の彼女からは想像も出来ない様な無愛想な態度。
膝の上にあった彼女の手が、ぎゅっとスカートを握った。

それを見た僕は、質問を変えてみる。


「またAに、なんかしたの?」


冷たく放ったその言葉に、陽花ちゃんは一瞬、瞳を見開いた。やがて彼女は、その整った顔を歪ませる。


「陽花は天月くんに少し甘えただけです。Aちゃん、勝手に嫉妬でもしたんですかね。」


まさかこの子、Aの気持ちを知ってて……

沸々と湧き上がる怒りの感情を抑え、僕は出発のタイミングを伺っていた様子の運転手さんに声をかける。


「僕は降りるんで、この子をお願いします」

「あー、はい……」


扉が開くなり車内をでた僕は、陽花ちゃんの方を振り返ることなく、天月くんの姿を探した。

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設定タグ:歌い手 , 天月 , まふまふ   
作品ジャンル:恋愛
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mayuri(プロフ) - スイさん» 引き込まれて下さいましたか…!本当に嬉しい限りです(T_T)まふさんにも幸せになって欲しい…作者も切実にそう思います(><)好きな人の幸せが自分の幸せだと考えた時、彼等は前に進めるのかも知れません。更新頑張ります、素敵なコメントありがとうございました! (2017年3月22日 13時) (レス) id: 2673ae7c30 (このIDを非表示/違反報告)
スイ - それぞれの複雑な感情がすれ違って、すごく引き込まれます! 天月さんも応援したいけど、まふさんも幸せになって欲しいです。どっちとでも幸せになれると思うので、後は夢主ちゃんの気持ち次第ですね笑 これからも頑張って下さい (2017年3月22日 11時) (レス) id: 77c9f3f671 (このIDを非表示/違反報告)
mayuri(プロフ) - つゆをさん» 読者さんが感情移入出来るような小説を作るのが目標なので、そう言って頂けるのは本当に本当に嬉しいです……!!作者も天月さんには幸せになって欲しいと願っています、きっともう少しの辛抱です!とっても嬉しいコメントありがとうございました!更新頑張れます! (2017年1月28日 2時) (レス) id: 2673ae7c30 (このIDを非表示/違反報告)
つゆを - 読んでいて、何度も夢主ちゃんや天月さんなどの登場人物に感情移入させられて、たくさんの感情に振り回されたお話でした。多分、この状況で一番自分の気持ちを押し殺して、辛い気持ちの天月さんには、早く幸せになって欲しいと願っています。更新頑張ってください…!! (2017年1月27日 1時) (レス) id: c0e7fa7aa0 (このIDを非表示/違反報告)
mayuri(プロフ) - 夏芽さん» 完全に表記ミスでした。ご指摘ありがとうございます、助かりました……!こんなミスだらけの小説なのに楽しく読んで下さっているとの事で心より御礼申し上げます。呆れず最後までお付き合い頂けると嬉しいです(T_T)!本当にありがとうございました! (2017年1月19日 0時) (レス) id: 2673ae7c30 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:mayuri | 作成日時:2016年11月4日 20時

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