構って欲しいのは ページ28
「タケミっち、納得して無かったね」
タケミっちと一虎を麓まで送った帰り、階段の鳥居を登っていると悟が話しかけてくる。
「そうね」
「忠告はしたけど、彼はマイキーくんを探すだろうな。………全く。Aといいタケミっちといい、全然僕の言うこと聞いてくれないよねー」
「私は呪術師なんだからいいじゃない」
言えば「あ」と何かを思い出したように声を上げる。
「そう言えば、お仕置きがまだだったね」
「は?」
お仕置き?
「そ。勝手に梵天の取引現場に行ってたことに対するお仕置き」
「お仕置きって……悟さっきお説教って言ったよね?」
「えー?そうだったかなぁー?」なんて悟がしらばっくれる。
『えー?何々?構って欲しいって?』
さっきタケミっちの前で喧嘩した時、悟が言ってた言葉を思い出す。
「………。私に構って欲しいなら、何かと理由付けるんじゃなくて、そう言ってよ」
小さく呟くと悟の足が止まる。
それに気付いて彼を見れば、アイマスク越しに私を見て固まっていた。
きっと任務で外出する時に、悟が私のワガママを叶えてくれるのは少しでも私と一緒にデートしている気分を味わいたいからっていうのもあるんだと思う。
これまで悟は教師をしながら特級呪術師として任務をこなしできたし、私はエマの看病やマイキーの居場所探しと、任務の合間も何だかんだ忙しくしていた。
去年までなら、たまに二人で出かける機会もあったけれど、私が任務以外で高専から出られなくなってからはパッタリだ。
一般的なカップルに比べれば、私たちは全然それらしい事が出来ていない。
だから悟はあんな行動に出たんでしょ?
ジッと悟を見つめれば、観念したように息を吐いた。
「Aには敵わないね」
「恋愛は惚れたほうが負けっていうもんね?」
「Aも言うようになったね」
そうやってお互いに笑い合う。
「それで?どうなの?悟は私に構って欲しいの?」
仕返しとばかりに、悟の口から“構って欲しい”という言葉を聞きたくてニヤニヤと尋ねる。
「そうだね。今日は僕も久しぶりに任務もないし、今晩は付き合ってもらおうかな。いやー楽しみだな!」
「へ…」
聞き間違えかな?
………嫌な予感がする。
でも私から聞いた手前、やっぱナシ!とは言えない。
「さ、悟?今、今晩って言った?……今晩って?え?」
尋ねると、ニッと笑いながら「分かってるくせに」と返された直後、悟は動揺する私の唇を奪った。
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作者名:月見 | 作成日時:2023年7月1日 13時