油断 ページ35
一般人だからって油断した!
こんなことなら、こうなる前に術式使っとくんだった!!
「この女!ナメやがって!!」
ようやく口元が開放されると壁に背中を打ち付けられる。
「カハッ!」
痛い!
でも、やっと息が出来る!
早く動かなきゃ!
首を捻ると、右から飛んでくる拳を私はスッと避けた。
これは未来予測で見えたいた。
なにもしていなければ、顔面にヒットしていたところだった。
「痛ってぇ!!!」
壁に拳を打ち付けたのは先ほど私が腕を捻っていた男だ。
「…っ、はぁっ、はぁ、……ハハハッ。………悪いけど簡単にやられるわけには…いかないのよ」
「テメェ!」
叫んで顔を近付けてきた男にガンッと頭突きを入れる。
途端、掴まれていた手が離れた。
ジーンッと頭に響いてくる痛みと急に体を開放された反動でその場に倒れ込む。
「うっ……」
頭突きの痛みで上下左右の感覚があやふやなままだけれど、直ぐに体を起こす。
いつもならこんなヤツら返り討ちなのに。
早く術式で次の動きを………
見ようとした時、グイッと髪を引っ張られた。
「!!」
目の前には、怒りに満ちた顔を向ける男の顔。
掲げられた拳が振り下ろされるのが、スローモーションに見えた。
あ、殴られる。
そう分かっているのに体が動かなくて。
反射的に目を瞑る。
「テメェら俺の女に何してんだよ」
少しドスの聞いたような声だった。
けれど、その声は私のよく知っている声だ。
目を開くと私に殴り掛かろうとしていた男の腕を悟が握っていて、男の拳が振り下ろされることはなかった。
「…さ、とる………?」
アンタ、何でそんな怖い顔してんのよ?
何でここに私がいるって分かったの?
私、悪態付いて悟のこと置いてったのに。
「俺、今めちゃくちゃ腹立ってんだよねー」
スッと悟がサングラスをずらして男たちを見た。
その瞳はいつも通り透き通っていて、美しいのに瞳の奥に怒りの感情を孕んでいて、私までゾクッとした。
「なにも言わずにこの場を去るか、気絶するまで殴られるの、どっちがいい?」
「は……?」と呆気に取られている二人の男はガタガタと体を震わせていた。
「選ばせてやる。さっさと決めろ。…ホラ」
悟はそう言うと「サァン!ニィ!」とカウントダウンを始める。
途端、「ぎゃぁぁあ!!」と悲鳴を上げながら、男たちが這いずるように路地から逃げていった。
それでも私はペタンと座り込んだまま動けなかった。
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作者名:月見 | 作成日時:2022年11月8日 22時