ふたり。(短編集)

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ki .




太輔が横尾さんにだれ？と言った瞬間


視界が一気に暗くなって


何も考えられなくて


息が出来なくなった。





・




俺は気がついたら、家にいた。


俺と太輔の、2人の家。





・





こんなにも悲しいのに


こんなにも苦しいのに


こんなにも痛いのに


こんなにも切ないのに







人って

本当に悲しいと、涙が出ないんだな。








・









・








メンバーの労わる視線が苦しくて


だけど安心させられる言葉をかける余裕なんて


正直今の自分にはなかった。


勝手に用意した、


太輔の新しい携帯と家の鍵を


ただただ無言で突きつける。







「 なにこれ。」


分からないふりして呆れたように呟いた玉に


「 0から、全部やり直そう。」


迷いなく、その目を捉えて、そう告げた。






各々が息を飲むのが分かって


「 、、最後まで、、俺の嘘に付き合って。」


頭を下げた。





・





元気になったら、だなんて


最後に叶えてやれない約束を交わした 。







ずっと行きたがってた夢の国。


早く一緒に行ってやればよかったなんて


後悔しても、もう遅いから。







・








これは、嘘をついた自分への報いだと思った。








・







でも

君は記憶が無くなるだなんて言われたら


手術を拒んでただろ？？



手術を受けた後も

きっと俺のことを思い出そうと


頑張りすぎてただろ？？





・






いいや、違う。






本当は


俺のことを忘れて


俺との思い出を忘れて


俺への気持ちを忘れてしまった、


そんな君に


向き合うことが怖い。








そんな君に


裏切られたと思ってしまう自分が嫌だった。





・





俺たちの時間が


初めから無かったことになんて


絶対にしたくはないから。






・






だから俺は


もう届くことのない


太輔への想いと


もう増えることのない


太輔との思い出だけを


一つも零さないように


大事に大事に抱えて生きていくって


そう、決めたんだ。







・







逃げてごめん。


弱い俺を、どうか許してください。

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