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特別 ページ43

そして暫しの沈黙の後、ふいに及川が私の名前を呼んだ。


私は及川の胸に頬を擦り寄せたまま「ん?」と短く返事をする。




「お弁当、ごめん。勿体ないことした」




声のトーンを落として申し訳なさそうに言った及川に、私はからかうように「花巻に食べてもらったから大丈夫だよ?」と言うと、私を包む腕に若干力が入ったような気がした。


もっと、私を必要としてほしい。
離れていかないでほしい。


そうじゃないと、今までの私の努力を全否定されて、何かに押し潰されてしまう。


今まで私のやってきたことは無駄なんかじゃない。全部及川にもっともっと近づきたくてやったこと。


そう、認めてほしくて。


願わくば、報われたくて。




「また作ってきて」
「ちゃんと、食べてくれる?」




この状況に、今までにないくらいの嬉しさが込み上げてきているのに、なんて欲張りなのだろう。





「もう、俺以外にあげないで」





切なさを感じるその声。


私は及川のただの友達になりたいわけじゃない。




「明日、作ってくる」
「明日土曜だけど?」
「部活の休憩に合わせて持ってくる」




腕を緩め、そっと及川が私の髪に指を通す。




「いい子」




優しく言って私の頭を撫でた及川に、得難い満足感を感じながら、わからない程度に深呼吸をした。




―――私は、及川の特別になりたいんだ。




「及川」




私は及川の筋肉質な胸を、手で押し返して体を離す。


及川は何食わぬ顔で私を見ている。そうだよね、及川が女の子を抱きしめるなんて、どうってことないよね。今まで彼女だっていたわけだし。


でも。それでも私は。




「私、やっぱり及川のこと、」
「A」




再度自分の気持ちを告げようとした私の言葉を及川が遮る。




「俺とAに終わりはないよ」




それは、及川が私との関係を妨げている理由だと思っていたもの。


きっと私が言おうとしたことを先回りして、待ったをかけている。


それは私の気持ちに応えることはないっていう―――





「それで、俺の一番大事な人もA」
「…え?」





予想外の言葉に、私が眉を八の字にして見上げると、及川は口元に寂しそうな微笑を浮かべていた。




「でも、まだ付き合えない」




いつの日かと同じ及川の言葉。まるでデジャヴ。あの日の繰り返しをしているようで。

待ち人と待たせ人→←心情証明



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設定タグ:ハイキュー , 青葉城西 , 及川徹   
作品ジャンル:恋愛
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いおり - 道徳の教科書に載ればいいのにぃ!!泣くことしか出来ませんが…凄く素敵な作品で本当に号泣しました!!1日で全部読ませて頂きましたがここまで素晴らしい小説は今までで一番だと思います!! (2020年12月9日 15時) (レス) id: 5e524467c0 (このIDを非表示/違反報告)
- 本編は全て夢主目線なのに他の登場人物の感情も伝わってきて、切なくなりました。作者様の描写が繊細だからこそ、読み手にしっかり伝わるのだと思います。番外編でまた深く心情が知れて切なくなりました。特にマッキーがかなりグッときました。すごく素敵な作品でした! (2020年6月22日 9時) (レス) id: 2f4dc25fc0 (このIDを非表示/違反報告)
おかか - めっちゃ面白かったです!一人一人の言動の真意とかしっかり話が作られていて、リアルで凄いです! (2020年6月21日 9時) (レス) id: 0ecde9d0b0 (このIDを非表示/違反報告)
ルーテル(プロフ) - 今まで読んだ占ツク作品で1番好きかもしれません…1人1人の心情がリアルでぐちゃぐちゃなのに真っ直ぐな恋心がとても心地いい作品でした!マッキーの切なさが一番心に来ました…いい作品をありがとうございました! (2020年5月31日 22時) (レス) id: 98b39f25a9 (このIDを非表示/違反報告)
モンブラン♪@アップルパイも捨てがたい(プロフ) - 泣いた...岩泉夢主さん好きなのかなぁ?は勘違いか...もうカッコよすぎ...ごちそうさまですっ (2020年1月13日 12時) (レス) id: 538cc2e76e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:小鈴 | 作成日時:2019年10月17日 21時

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