木兎さんの本音 ページ37
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些細なことですら、愛おしく感じてしまう。
『これより、演劇部による発表の準備に入ります。演劇部の皆様は───』
校内放送がかかって、Aさんが俺のワイシャツの裾を向いて俯いてた。
なんだと思い、言葉を待つけど口を開こうとはしない。
「…どうしました?」
俺が聞くと、彼女がゆっくりと顔を上げた。
「赤葦、私頑張るから!」
普段よりひと際大きな声で言ったその言葉が、熱く感じた。
「はい。頑張ってください」
俺はワイシャツを掴む彼女の小さい手に触れ、その背を見送った。
*
「おーい、赤葦こっち〜!」
会場に入ると、前の方の席にいた木兎さんが俺に手を振った。
「どう?いい席じゃねえ?ど真ん中!」
「はい、ナイス確保です」
お礼を言って木兎さんの隣に腰を下ろす。
「いや〜俺らのとこ忙しくて抜けるの大変だったわ」
「お疲れ様です」
「赤葦は今日出番ねえの?」
「俺は昨日だけです。元々俺は当日の担当は外れてましたし。昨日はたまたま」
「え?そうなの?じゃあ昨日のお化け赤葦はレア?」
「はい、レアですね」
「おー!そーか!あれはレア赤葦か!レアカアシ!ふはははは!」
そんなくだらない会話をしていると、『これより演劇部の発表を行います。携帯電話等スマートフォンの電源は―――』とアナウンスがかかり、会場が暗くなる。
「始まるな!」
隣で木兎さんが忙しなく動いている。少し、落ち着いてほしい。
静かな会場に沢山の拍手と「いよっ!演劇部!」「待ってました!」と沢山の言葉が飛び交う。
『昔々あるところに』
ナレーションが始まるとともに舞台幕が上がり、演劇が始まる。
「A、白雪姫なんだってなー!」
木兎さんは腕を組んでステージを見ている。
『鏡よ鏡、この国で一番美しいのは』
話しが少し進むと、Aさんがステージ脇から現れて、木兎さんが「Aだー!」と騒いでいる。
『あら、家があるわ!』
さっきまで緊張していたのが嘘のような、堂々とした演技。
『誰かいませんかー?』
あぁ、俺はこの彼女の演技に魅せられたんだ。
『少しだけ、休ませてもらおうかしら』
表情豊かな彼女が、生き生きして見える。
「悔しいけど」
木兎さんが、目の前のステージで表情を変えながら楽しそうに動き回るAさんを目で追いながら言う。
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凛々 - 赤葦と夢主の掛け合いが素敵…。甘さが私に合いすぎです!続きが気になって仕方ないです。 (2019年11月8日 20時) (レス) id: df09ac0ca3 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 39話以降のタイトルのセンス良すぎでは…。全話タイトルつけてほしいくらいです。。。 (2019年9月23日 18時) (レス) id: c3e4fd17c8 (このIDを非表示/違反報告)
madoka - コメント失礼します。小鈴さんの作品は「これぞ純愛!」って感じがして、穢れが一切ない感じがたまらなく好きです!今回もいい感じのキュンキュンありがとうございます!番外編と続編も楽しみにしています!これからも頑張ってください! (2019年9月20日 13時) (レス) id: b7f00b86d0 (このIDを非表示/違反報告)
ずー(プロフ) - あまーい!!実は木兎さんが主人公に片思いをしていたこともめっちゃ胸キュンでした!!本当に小鈴さんの作品大好きです!!!!! (2019年9月19日 13時) (レス) id: 1ffe4440e9 (このIDを非表示/違反報告)
すいか(プロフ) - めっちゃキュンってくるのと、赤葦のかっこよさが、いつもより増してまじでよかったです!他の作品も読んでみようと思います (2019年9月18日 20時) (レス) id: 2af2bdbcf5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小鈴 | 作成日時:2019年9月7日 19時