緊張 ページ36
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「行って来いよ、A」
看板を持った木兎さんが、Aさんの背中を叩いた。
「お前ずっと出ずっぱりだし」
「え？いいの？」
木兎さんが俺に向かってAさんにバレないように下手くそにウィンクをした。
…両目瞑ってます。
「ちょっと待ってて赤葦！準備してくる！」」
Aさんが屋台の裏に入ったのを見届けると、
「Aのこと頼んだぞ、赤葦」
と、木兎さんが俺の頭を乱雑に撫でた。
＊
「赤葦あれだからね、お化け屋敷は絶対に行かないからね！？昨日行ったので十分楽しめたからね！？」
「でもAさん。台本探した時は 肝試しみたいだ って楽しそうにしていたじゃないですか」
「赤葦そんなこと覚えてるの！？あ、あれは、あれ。これは、これ！」
「…どういうことですか」
「どういうことでしょう」
Aさんが人混みに呑まれないよう、注意しながら歩く。
時折すれ違う男子が、Aさんを振り返っては「声かけてみろよ」と互いを突きあっている。実際にこの状況で声を掛けてくるような男はいないけど。
「あ、たこ焼き食べよたこ焼き！」
俺のワイシャツを引いてたこ焼きの屋台を指すAさんに「好きですね」と、列の最後尾に並んだ。
「ん〜！おいしい！」
Aさんは出来立てのたこ焼きを冷まして頬張っては、美味しそうに食べる。
すると、急にたこ焼きを食べる手を止めたAさん。
たまに、テンションの上がるタイミングと落ちるタイミングがわからないことがある。
「どうしました」
たこ焼きが、あと二つ残っている。
「き、緊張…で、」
顔を上げてヘラっと笑う彼女の手は、心なしか小刻みに震えているように見える。
確か、演劇部の発表はもうすぐ。
俺はもう一つの爪楊枝にたこ焼きを刺し、Aさんの口元に運ぶ。
「ちゃんと、見てますから」
たこ焼きを口に入れたAさんは、拳を握って「よし」と小さく意気込む。
「今赤葦が‘あーん’してくれたから、頑張る！」
目を細めて笑う彼女が、最後の一つのたこ焼きを爪楊枝に刺す。
「はい赤葦も。あーんは？」
恥ずかしさともどかしさが相まって、心が浮つく。
Aさんを見ると、早くしてよ、と笑う。
俺は彼女が持ち上げる手を掴み、たこ焼きを口に含んだ。
昨日と同じように「おいし？」と首を傾げる彼女に、俺は「はい」と返事をした。
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凛々 - 赤葦と夢主の掛け合いが素敵…。甘さが私に合いすぎです！続きが気になって仕方ないです。 (2019年11月8日 20時) (
レス) id: df09ac0ca3 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 39話以降のタイトルのセンス良すぎでは…。全話タイトルつけてほしいくらいです。。。 (2019年9月23日 18時) (レス) id: c3e4fd17c8 (このIDを非表示/違反報告)
madoka - コメント失礼します。小鈴さんの作品は「これぞ純愛！」って感じがして、穢れが一切ない感じがたまらなく好きです！今回もいい感じのキュンキュンありがとうございます！番外編と続編も楽しみにしています！これからも頑張ってください！ (2019年9月20日 13時) (レス) id: b7f00b86d0 (このIDを非表示/違反報告)
ずー(プロフ) - あまーい！！実は木兎さんが主人公に片思いをしていたこともめっちゃ胸キュンでした！！本当に小鈴さんの作品大好きです！！！！！ (2019年9月19日 13時) (レス) id: 1ffe4440e9 (このIDを非表示/違反報告)
すいか(プロフ) - めっちゃキュンってくるのと、赤葦のかっこよさが、いつもより増してまじでよかったです！他の作品も読んでみようと思います (2019年9月18日 20時) (レス) id: 2af2bdbcf5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小鈴
| 作成日時：2019年9月7日 19時
