夜空に浮かぶ花 ページ19
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飲み物を買って待たせた場所へ戻ると、彼女の姿は見当たらなく、代わりに二人の男の姿。
「ねーねー、お姉さん一人?」
「俺たちと花火見ようよ」
派手めな男が、二人。
あそこはAさんが座っていた場所だ。
近づくと「あ、あの、私、人を待っているので…」と弱々しい声が聞こえて。
「A、何してんの」
俺は焦ったように、男の間に割って入りAさんの腕を掴んだ。
「あ、赤葦」
震える声に、俺は彼女を自分の背に隠した。
「ちぇっ、ツレがいたのかよ」
「次行こうぜ、次」
男たちは俺の姿を認めるなり、足早に去っていった。
「すみません、遅くなって」
腕を離さずに振り返ると、Aさんが大きな瞳に涙を浮かべていた。
「あ、あかーし…」
「なにか、酷いことでも」
俺は彼女の頬を伝う涙を指で拭う。
「ち、違う。びっくり、して」
溢れる涙に、俺は浴衣の袖を軽く押し当てると、Aさんは慌ててそれを拒否する。
あの時の、ハンカチのように。
「だめ!マスカラついちゃう!」
俺は「構いません」と、彼女の手を払って涙を拭う。
「俺のせいで、すみません」
心の底から後悔した。
あのとき、一人にするべきではなかった。
「────私あんまりお祭りとか来たことなくて。だって人が多くて怖いじゃない?」
先ほど言っていたAさんの言葉を思い出す。
綺麗な彼女が、一人でいたら声を掛ける男がいるってことは容易に想像がつく。
なにやってるんだ俺は。眉を顰める。
今日の俺、冷静じゃない。
「赤葦、あのね」
涙が止まったAさんに安心しながら、俺は隣に腰を下ろす。
「今日のお祭り、私が木兎にお願いしたんだ」
「…え?」
《ヒュー》
「赤葦と二人で行きたいから手伝って、って」
《ドーン》
Aさんが言い切ると同時に、夜空に大きな花が咲いた。
「わ、綺麗」
口元に手を当てて、夜空に咲いた花を見上げるAさんはやっぱり綺麗で。
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凛々 - 赤葦と夢主の掛け合いが素敵…。甘さが私に合いすぎです!続きが気になって仕方ないです。 (2019年11月8日 20時) (レス) id: df09ac0ca3 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 39話以降のタイトルのセンス良すぎでは…。全話タイトルつけてほしいくらいです。。。 (2019年9月23日 18時) (レス) id: c3e4fd17c8 (このIDを非表示/違反報告)
madoka - コメント失礼します。小鈴さんの作品は「これぞ純愛!」って感じがして、穢れが一切ない感じがたまらなく好きです!今回もいい感じのキュンキュンありがとうございます!番外編と続編も楽しみにしています!これからも頑張ってください! (2019年9月20日 13時) (レス) id: b7f00b86d0 (このIDを非表示/違反報告)
ずー(プロフ) - あまーい!!実は木兎さんが主人公に片思いをしていたこともめっちゃ胸キュンでした!!本当に小鈴さんの作品大好きです!!!!! (2019年9月19日 13時) (レス) id: 1ffe4440e9 (このIDを非表示/違反報告)
すいか(プロフ) - めっちゃキュンってくるのと、赤葦のかっこよさが、いつもより増してまじでよかったです!他の作品も読んでみようと思います (2019年9月18日 20時) (レス) id: 2af2bdbcf5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小鈴 | 作成日時:2019年9月7日 19時