エースの心得 ページ44
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「木兎、頑張って」
「おう、ちゃんと見てて」
春の高校バレー 東京都予選。
梟谷学園は着実に決勝戦へと駒を進める。
大エース要するチームだって、よく言うけど。
そのエースだって、沢山練習して沢山つまずいて、沢山沢山努力していたのを、私は知っている。
そのエースを支えている他のメンバーも、並みならぬ努力をしていて。
【エースの心得】
一つ、背中で味方を鼓舞するべし
一つ、どんな壁でも打ち砕くべし
一つ、全てのボールを打ち切るべし
木兎の広い背中が、すごくかっこいい。
でもそこにいるのは、私の知っている木兎と赤葦ではない。
バレーに本気な二人だ。
それでも、越えられない壁はあって。
≪ピィーッ≫
「覚えとけよ佐久早!今度―――」
「木兎さん、終盤に三連続サーブミスは頂けません。修正していきましょう」
「赤葦!!!タイミング!!!」
春の高校バレー
東京都予選決勝戦
セットカウント 井闥山 2-1 梟谷
挨拶を終え、応援席に「ありがとうございましたーッ」と頭を下げる選手たち。
木兎は応援席にいる私にVサインをして二ッと笑った。
視界に映っている木兎が歪む。
拍手が、鳴り止まない。
球技大会で悔しいとかそういう感情が全くなかったのは、きっと私が一生懸命じゃなかったから。
木兎の試合でこんなにも胸が熱くなって悔しくて涙が止まらないのは、木兎がバレーが大好きで一生懸命打ち込んで、毎日夜遅くまで練習していたことを知っているから。
悔しい。
*
「なに泣いてんだA!全国だぞ全国!今年も春高行けるんだぞ!」
「だ、だって、木兎あんなに練習したのに」
ベンチで目をこする私の隣に座った木兎。
泣きたいのは木兎なのに。
「だいじょーぶ!井闥山には全国で俺たちが勝−つ!リベンジだ!な!赤葦!」
「はい、帰って練習です」
「赤葦、今日はストイックだな」
目の前には赤葦も立っていて。
「木兎、赤葦。お疲れ様!」
私が笑うと、木兎が私の頭に手を乗せた。
「お前が来てくれたから頑張れた」
いつの日か、木兎が言っていた言葉を思い出す。
「俺、中学の頃チームで俺だけが突っ走りすぎて、気づいたら誰もついてきてなくて。それがすげー怖くて。俺だけが頑張っても意味がないんだってわかった。でも今は、みんなも俺と一緒に突っ走って上を目指してくれる。そんで、支えてくれる。すごく、頼もしいんだ」
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アニメしか勝たんっ!! - やっぱり、木兎さんはかっこいい...! すっごくキュンキュンしました! それと、赤あしの片思い... 素敵な作品ありがとうございました!! (2021年9月6日 19時) (レス) id: a9d6af11eb (このIDを非表示/違反報告)
しきし(プロフ) - 木兎が好きで色々な木兎作品を読みますが、結局小鈴さんのこの作品に戻ってきてしまいます、何度読んでも好きです!! (2020年8月21日 20時) (レス) id: 46b82dd2cd (このIDを非表示/違反報告)
モンブラン♪@アップルパイも捨てがたい(プロフ) - 尊い。私ごときの語彙力じゃ表せないです。なんか、もう、尊い。 (2019年11月24日 22時) (レス) id: 4e49721770 (このIDを非表示/違反報告)
c.f(プロフ) - 番外編読みました。私のツボを抑えておられますね…最高です。そして実は短編集とかもいける口では…?と思ってしまうほど纏まった内容でドキドキが止まりませんでした!また更新楽しみにしてます! (2019年10月4日 21時) (レス) id: 05c431cb99 (このIDを非表示/違反報告)
江(プロフ) - 通知がきて飛んで来ました!やっぱり木兎さんの書き方上手ですね。強引な感じも好きです。そして作者さんも好きです。これからも楽しみにしてるので更新頑張ってください!!! (2019年10月3日 18時) (レス) id: 1247715456 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小鈴 | 作成日時:2019年7月30日 20時